完全雇用なのにGDPが伸びないのはなぜ? 日本型雇用の変革がカギを握る
現状では日本の失業率は完全雇用とされる3.8%(OECD参照)を下回って低下している。統計上は、需要不足を原因とする失業者は存在しない完全雇用の状態にある。『日銀短観』12月調査における雇用人員判断DI(「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた割合を引いた値)を見ても、過去2年以上、「不足」超、つまり人手不足感が解消されていない(※全規模・全産業ベースで見ると2013年9月調査から「不足」超である)。
実質賃金も前年比増勢を確保し始めており、政府・日銀の政策を評価するにあたって、雇用・賃金情勢のひっ迫は今や、数少ない前向きな動きを示している分野である。
ところが、実質GDPは2014年度で前年度比マイナス1.0%であり、消費増税前の駆け込みとその反動減を含む2014年暦年で見ても、前年比ゼロ%で、その後も景気は拡大していない。このところの「雇用と景気のズレ」は著しいものになっている。完全雇用の背後で何が起きているのかを整理してみたい。
GDPへの貢献が小さい労働者が増えた
2014年1~3月期から足元(2015年7~9月期)までの成長率はマイナス0.9%とマイナス成長である。一方、同期間の雇用市場では就業者数が0.9%増加し(6345万人から6399万人へ)、完全失業者数は4.2%減少した(238万人から228万人へ)。結果、同期間の失業率は0.3ポイント近く低下(3.6%から3.4%へ)している(季節調整値)。
つまり、過去1年9か月程の日本経済においてはGDPが縮小しているにもかかわらず、就業者が増加するというズレが見られる。この結果、「実質GDP÷就業者数」で算出される労働生産性(≒1人当たりGDP)は大きく低下しており、同期間で1.8%も減少した。これらを総括すれば「GDPへの貢献が小さい就業者が増えた」という印象である。
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