ソーシャルメディアと旧勢力の新たな冷戦

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世界中で情報戦争が勃発している。一方には、「情報の自由な流通と情報へのアクセス権は基本的人権にかかわる問題だ」と見なす政府がある。そしてもう一方には、「政府による情報管理は主権国家の基本的な権限だ」と見なす政府がある。この争いは、国際電気通信連合(ITU)の内部においても、シリアのような国々においても、日常的に繰り広げられている。

最近、社会学者のフィリップ・N・ハワードが“新たな冷戦”という言い回しを用いている。彼は、放送メディアと新興のソーシャルメディアとでは、ニュースの制作、所有、検閲へのアプローチが大きく異なると主張している。

放送事業は多額の資金を必要とするため、集中化する度合いが大きく、国家による管理の影響を受けやすい。対照的に、ソーシャルメディアは、携帯端末を持つ人なら誰でも、政府の行動や悪行を監視する潜在的な監視人へと変身させる。

ハワードは、ロシア、シリア、サウジアラビアにおける放送メディアとソーシャルメディアとの戦いを調査した。その結果わかったのは、各国のメディア文化はまったく異なるにもかかわらず、3カ国の政府はみな、国家による放送事業の管理を強めている、ということだった。

これらメディア間の戦いは興味深く、また重要でもある。情報の流通の仕方は、社会や政治形態をどう組織するかについての考え方を反映するからだ。

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