中国は、南沙紛争で軍事衝突の道を選べない 同床異夢の状況に日本はどう応じるべきか

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天候悪化を理由とする説明を真に受けることも難しい。現場上空に達する時間帯に、天候がどう変化するかは、事前に把握できることだ。それが出来なければ、とても軍事作戦など行えない。もちろん、天候が悪化して事前に準備したコースが危険と判断されれば、回避コースも設定されているのが普通だ。つまり、事前に想定した範囲内で飛ぶことになる。

毎日飛んでいるわけでもない、特別に警戒を要する空域での飛行で、不運にも、そこしか回避コースが無かった、という状況はあまりにも不合理である。なぜ国防総省は、歯切れの悪いコメントを出すことになったのか。

米中の暗黙の合意とは?

推測になるが、恐らく米政府と中国政府の間には、双方が暗黙の了解、合意としているラインが存在するのだろう。

米政府は公式にも非公式にも、中国が主張するの領土領空を認めないが、米艦船が「航行の自由作戦」で中国側主張の領海内を意図的に通過する場合でも、12海里から僅かに内側に入るだけで、過度な接近はしないし、事前に相手国政府への通告も行う。対して中国側は、米側の侵犯に形式的な抗議は表明するが、かつて米ソ間であったような、艦船を体当たりさせて阻止するようなことはしない。お互いに刺激をしないように気を使っていることは明白で、節度のあり対立関係といえる。

今回のB52の飛行は、恐らく、この暗黙の了解から大きく外れて、海上施設に近づき過ぎたということだろう。

近づき過ぎた理由はいろいろ考えられる。米空軍のオバマ政権への反発が原因だったのかも知れないし、人工島の防衛設備がどの程度完成しているのかを探るために、わざと近くまで寄ったのかも知れない。

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