歯科医師が子どもの乳歯提供を呼びかけ 目指すは、ストロンチウムによる被曝解明
半減期が約29年と長く、発がん性など人体への影響がセシウムよりもはるかに大きい放射性物質ストロンチウム90--。子どもの乳歯に含まれるストロンチウムを測定することで、健康リスクを調べようという取り組みが始まっている。
子どもの乳歯提供を呼びかけているのは、千葉県松戸市で歯科医院を営む藤野健正・きょうどう歯科新八柱所長(医療法人社団きょうどう理事長=写真)。福島第一原発の事故後、福島県内で歯科医療支援活動にかかわってきた藤野氏は、カルシウムと似た性質を持つストロンチウムが骨や歯などに蓄積しやすい性質に着目。
「内部被曝の実態を明らかにするうえで重要な証拠になる」との考えから、子どもの歯が生え替わる際の「脱落乳歯」の保存および提供を呼びかけ始めた。
手順は簡単で、藤野氏が用意した調査票に記入したうえで子どもの乳歯を藤野氏の歯科医院宛てに郵送する。藤野氏は一定の数を集めたうえで、米国の専門家団体RPHP(Radiation and Public Health Project)に送付。精密な測定機器を持つ同団体が解析したうえで、結果を日本側に通知する。
保護者の参加費は無料で、氏名などの個人情報は明らかにされない。検査結果については、「集めた地域ごとに解析したうえで、提供いただいた方に封書でお返しする。ただ、高い値が出た場合は、個別の追跡検査も考えている」と藤野歯科医師は話す。この取り組みは、岡山理科大学の豊田新教授(応用物理学)もバックアップする。