ファッションは知識集約型産業 タビオ会長・越智直正氏④

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おち・なおまさ 1939年生まれ。中卒後、大阪の靴下問屋にでっち奉公。68年に独立、靴下卸売業ダン(現タビオ)を創業し社長に。2000年大証2部に上場。02年英ロンドンに海外初となる店舗を開く。靴下の企画・卸・小売りで業界大手の座に就く。08年会長。

独立する前の若い頃、「知識集約型産業の3大ビジネスは、ファッション、コンピュータ、航空機」と書かれた本に出合いました。そして、その特徴は「ハードウエアとソフトウエアの両輪によって成り立つ産業」ということでした。

タビオの商売に当てはめれば、ハードは「商品」、ソフトは「販売方法」になる。この文章に出合った当時、工場ではたくさんの従業員やパートが懸命に働き、もちろん私も朝から晩まで休む間もなく走り回っていました。そのため、わが業界は労働集約型産業だとばかり思っていました。

この言葉が、その後の私の人生を左右するようになりました。靴下の技術者が販売方法を考えることはいっさいなかった時代。ファッション産業が知識集約型産業と知った私は、「製造と販売の一体化こそが自分の使命や」と思うようになりました。

人格の集まりが、企業の品格を作り上げていきます

一所懸命に作った靴下を、理想的な形でどう売るか。その答えこそ、独立後に作り出したニッターシステム(生産・在庫管理システム)であり、流通システムであり、管理システムであったわけです。コンピュータの原理などはよくわかりません。でも、その時その時の最先端機器を活用し、ハードとソフトが融合した経営ができない企業は亡ぶと考えています。

 わがタビオは、世界一の靴下総合企業を目指しています。売り上げ基準ではありません。一流の商品で一番になるための創意工夫を重ねての世界一を目指しているのです。

日本の靴下は繊細優美ではきやすく、丈夫で、長く世界の最高峰と評価されてきました。これはわれわれの先輩方の努力の賜物です。そこに、安いだけの靴下が海外からどんどん入り、先人たちが築いてきたモノづくりの常識が覆されてしまいました。

業者が意欲を喪失している中、タビオは日本の靴下が持つ本来の価値を引き継ぎ、どうお客様にお届けするか。知識集約型産業としての靴下産業はどうあるべきか。その解を求めて、試行錯誤を続けてきました。

本当の一番になるには、企業の経営者や従業員一人ひとりの人格に行き着くと思います。そして、その人格の集まりが、企業の品格を作り上げていきます。儲けだけを追求した二流、三流の商品で一番になっても意味がない。お客様が本当にはきよい靴下を届けるために誠意を尽くし、自分が恥ずかしくない靴下で世界一になることこそ、タビオの目指すところです。

週刊東洋経済編集部
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