C型肝炎の特効薬、バカ売れで浮上する問題 2015年5月発売、いきなり国内販売トップに

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――創薬が年々難しくなる中、C型肝炎の特効薬をはじめ、エイズやインフルエンザの分野でも画期的な製品を出せているのはなぜか。

サイエンスとデータを最も重視している。競合との関係やマーケティング上の理由などに基づいて意思決定するのではなく、重要な決断はサイエンスとデータを十分に理解したうえで行うべきだ。

――国内市場でC型肝炎の次に狙っている分野は。

次に注力しているのが、がんの領域。血液がんの非ホジキンリンパ腫を対象に、新しいクラスの薬剤を開発している。すでに欧米では発売済みで、開発後期段階の臨床第3相試験を行っている。

そのほか、日本に何百万人もの患者がいるNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)や、潰瘍性大腸炎、関節炎などの治療薬も開発中だ。

発展途上国の患者に治療薬を届けるのが使命

――エイズやC型肝炎は発展途上国に患者が多い。そのような新興市場での戦略は?

発展途上国でのビジネスにはモデルがないので、手探り状態でやっている。HIV感染者は世界に約3500万人、C型肝炎患者は約1億8500万人おり、半数以上が発展途上国にいる。こうした患者に治療薬を届けていかなければならず、われわれは非常に大きな責任を負っている。

エイズに関しては2003年に「HIVアクセス・プログラム」を開始し、発展途上国に当社の薬を低価格で提供している。また、生産能力が大きいインドの後発医薬品メーカー数社とライセンス契約を結び、エイズ治療薬やC型肝炎薬を多くの患者に届けている。エイズ治療薬を届けた発展途上国の患者数は800万人に達した。

――日本の製薬会社は最大手の武田薬品工業でも世界17位(2014年)と、世界で存在感がない。日系メーカーについて思うことは?

日本企業の研究開発力は非常に高いと思う。当社も2014年に小野薬品工業から、がん細胞のシグナル伝達を阻害するタンパク質をターゲットとする化合物を導入しているし、小野薬品は米ブリストル・マイヤーズ スクイブと共同で、がん免疫薬も開発した。

ただし、いわゆる西側諸国までフィールドを大きく広げた企業は少なく、武田薬品、アステラス製薬、第一三共くらいではないか。高い研究開発力を備えたまま武田薬品のスケールになれば、世界での存在感は増していくと思う。

長谷川 愛 東洋経済 記者
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