「山ガール」ブーム去ってもトラベルやランニング向けを掘り起こす。ゴールドウインがアウトドア事業の新戦略発表

拡大
縮小
「山ガール」ブーム去ってもトラベルやランニング向けを掘り起こす。ゴールドウインがアウトドア事業の新戦略発表

スポーツウエア・用品の中堅メーカー、ゴールドウインが8月1日、2013年の春・夏シーズンに向けたアウトドア事業の新戦略を都内で発表した。

ゴールドウインの事業セグメントは「アウトドア(登山、トレッキング、マリンなど)」「アスレチック(テニス、ランニング、水泳など)」「アクティブ(自転車、スキー・スノボなど)」のスタイル別に分かれる。その中でもアウトドア事業は、前12年3月期の売上構成比で全体の47%を占める。今13年3月期からは、ここのところ伸び悩んでいたアクティブ事業(前期の売上構成比で10%)を部門統合するため、文字どおり、アウトドアがゴールドウインの大黒柱事業となる。

ゴールドウインは各事業において、自社ブランド(「ゴールドウイン」など)のほか、海外著名ブランドを導入する「マルチブランド」戦略を採用。アウトドア事業では「ザ・ノース・フェイス」と「ヘリー・ハンセン」が2本柱のブランドとなっている。

登山やトレッキング向けのウエアや用品で知られる「ザ・ノース・フェイス」は、ここ数年“山ガール”ブームなどにも後押しされて成長を続けてきた。「山ガールブームは過ぎ去ったと言えるが、実際に山に行くと若い女性はたくさんいる。ブームに乗って登山を始めたエントリー層が、今では中級層となり、よりよいものを買い求める傾向が出てきた」と、同社のノースフェイス事業部長の森光(もり・ひかる)執行役員は説明する。同ブランドについては、アウトドアで培った機能を、トラベルなど日常シーン向けや、ランニングなどに適用した製品群も強化していく計画だ。

一方、アウトドアブランドの2本柱の一つ「ヘリー・ハンセン」は、ロンドン五輪のヨット(セーリング)競技に参加する日本選手向けに公式ウエアとして提供されるなど、“マリン(海)”向けでは頂点を極めるブランドの1つ(上写真)。が、同社ヘリーハンセン事業部長の鈴木昭彦氏は、「セーリングは特殊なスポーツで、ユーザーは大きく増えない。バブルがはじけて個人で船を所有する人も減っている。エントリー層が増えている、登山やトレッキング向けも提案していきたい」と話す。

ヘリー・ハンセンについては、従来からのマリンをブランドのコアとしつつ、昨年から登山・トレッキングを中心とするアウトドア向けの製品展開を開始。欧米市場のヘリー・ハンセンは、すでに1998年に、マリン分野からアウトドア分野に展開済みという。ゴールドウインでは13年から、川遊び、ガーデニング、森林浴などの「Nature fitness」向けを、ヘリー・ハンセンの新カテゴリーに加える計画だ。

今回、ゴールドウインが発表したアウトドア事業の新戦略によって、「ザ・ノース・フェイス」は、従来「アスレチック」に分類されていたランニングなどの分野へ新規に展開。また、「ヘリー・ハンセン」は、同じアウトドア領域ながら、従来はザ・ノース・フェイスが担っていた“山”の分野にウイングを広げることになる。

アスレチック分野がランニング向けなどを除いて伸び悩む中、スポーツウエア・用品業界では、アシックスがスウェーデンのアウトドア大手「ホグロフス」を買収(10年)するなど、アウトドア市場への傾斜が強まっている。78年のザ・ノース・フェイス導入以来、アウトドア向けで先行してきたゴールドウインの来シーズンに向けた一手が注目されそうだ。

(大滝 俊一 =東洋経済オンライン)

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT