ルネサスエレクトロニクスは再生できるか 10工場を売却・閉鎖
プラスになる切り離しを
母体3社から引きずる製造拠点の非効率性は、これまでもさんざん指摘されてきた。遅ればせでも工場売却・閉鎖の決断は当然といえる。だからといって、切り離しさえすれば何でもいいわけではない。
象徴的案件が、山形・鶴岡工場。鶴岡はテレビやゲームなどのシステムLSIを手掛ける最新鋭工場だが、納入先の国内メーカーの凋落に加えて、製品の転換を図るルネサス本社が、2年前に新規受注を停止する判断を行ったことなどで稼働率が低下。業績悪化の元凶と位置づけられている。
昨年来、ルネサスは鶴岡の売却を模索してきた。が、海外の複数企業に断られ、現在は世界最大の半導体受託製造企業、台湾TSMCに望みを託す。6日、7日と経営陣が台湾に飛び、交渉を急ぐ。
しかし、そもそも鶴岡とTSMCでは製造工程が異なり、TSMCが買っても効率運営は不可能。半導体に詳しい人間なら、この組み合せに疑問を感じずにはいられない。それを引き取ってもらうには、タダ同然の安値で売るか、“お土産”をつける必要がある。実際、売却後の稼働率保証などそうとう不利な条件を突きつけられているようだ。これでは、鶴岡を切り離せても、事業リスクは残る。
一方で、鶴岡が持つ低消費電力の混載DRAM技術は、世界でもルネサスとIBMしか持たない。現在は任天堂向けが大半だが、モバイルなど低消費電力への需要増で世界有数のIT企業からの引き合いが急速に増えている。