顧客との絆づくり型O2Oで世界にも挑戦する無印良品(前編)《O2Oビジネス最前線・黎明期を迎えた新・消費革命》

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良品計画は西友の事業部から分離独立し、「無印良品」ブランドを企画販売する企業として知られている。

もともと無印良品の強みは「商品範囲」と「顧客範囲」が幅広いこと。過去20年で、生活雑貨から食品、衣料品、家具など、商品のカテゴリーを拡大してきた。それに伴い「顧客範囲」も広がった。かつてはその拡大戦略で小売業界の中を勝ち抜いてきた。

しかし、近年は、カテゴリーキラー(家具や衣料品などの特定分野の商品を大量に品ぞろえし、低価格販売する小売業)の他企業が無印良品の市場を侵食、2009年2月期以降、業績の後退が続いてきた。だが、12年2月期にようやく増収増益路線に復帰、13年2月期は最高益圏を目指すところまで回復してきた。

実店舗への送客が狙い

そんな無印良品は、O2O(オンライン・ツー・オフライン)への取り組みでは、先進企業として知られる。O2Oという言葉がまだない5~6年ほど前からネットの情報やサービスを活用、顧客の満足度を上げ、リアル店舗での売り上げを伸ばすことに取り組んできた。たとえば、ネットストアで商品を選択すると、取り扱いしている街の店舗の一覧や各店舗の在庫情報が確認できる。

現在、ネットビジネスを担当するWEB事業部を率いる奥谷孝司氏が10年、同部長に着任したとき、金井政明社長からWEB事業部の役割について、次のように言われたという。

「WEB事業部の役割は大きく3つある。いちばんのメインは『店舗送客』、次に大事なのが、『お客さんとのコミュニケーション』。ここは古くからモノづくりに寄せたところでは取り組んできた。最後に『ネットストアの売り上げ』」

どうすれば店舗送客できるのか。考え抜いた奥谷氏がたどり着いたのがCRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理)だ。CRMとは、顧客満足度向上のため、企業が顧客と長期的かつ良好な関係を築く手法のことを指す。CRMでは、一般に「商品範囲」「顧客範囲」「顧客シェア」「顧客時間」という4つの切り口がある。その中で奥谷氏は「顧客時間」に注目した。

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