(第52回)時価総額は巨大だが問題多い中国の銀行

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貸出金利を経済の実体より低く抑え、しかも銀行が利益を得られるように預金金利をさらに低くする。国民から低コストで資金を調達し、大企業の投資にあてているわけだ。これは、高度成長期の日本と同じ構造である。中国の物価上昇率は預金金利を上回るため、銀行預金は目減りする。そのため、多くの中国人はマンションに投資している。これも「土地神話」が成立していた頃の日本と同じだ。

日本と違うのは、中小企業などに融資を行うまともな金融機関が存在しないことだ。また、サービス業への融資パイプが極めて細いため、第3次産業が成長しない。

金融は政策の道具としても使われる。それが、経済危機後の拡大策にはっきりと表れた。

08年、中国政府はインフラ投資を中心とした4兆元の大型景気対策を実施した。その結果、10年のGDPに占める投資の比率は、46・2%という異常な値になった(日本での最大値は、1973年の36・4%)。

この実行にあたっては、中央政府の予算が拡大しただけでなく、政府の貸出拡大要請を受けた銀行の融資拡大が大きな役割を担った。図に示すように、貸出基準金利は、08年の下半期に大幅かつ急激に引き下げられた。そして、融資額が急激に増大し、それに伴って土地価格も上昇したのである。


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