MRJが挑む「最強ライバル機」との頂上決戦 三菱航空機の営業キーマンに聞く

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MRJを発注済みのエアラインは、日本のANA、JALと米国3社、ミャンマー1社の計6社。受注機数だけでなく、導入エアライン数もさらに増やして行く必要がある

――ライバルについて聞きます。MRJと同じ100席以下のリージョナル機を手掛けるのは、エンブラエル(ブラジル)、ボンバルディア(カナダ)、スホーイ(ロシア)、COMAC(中国)の4社ですが、実際の競合状況は?

新規参入のスホーイ、COMACには、さほど脅威を感じていない。スホーイは欧州の一部とメキシコで名前が出るくらい。中国COMACに関しては、少なくとも欧米や中南米、アジアでの商談で名前が出てきた記憶がない。もちろん、これから旧CIS諸国や中国で販売活動をやる時には両社が強敵になるが、世界でのライバルという点では、やはり長年の実績のあるエンブラエルとボンバルディアの2社になる。

ただし、ボンバルディアに関して言えば、正直、リージョナル機での競争力はかなり落ちている印象を受ける。現行機の「CRJ」は機内が狭く、快適性の面で見劣りする。同社は社運を懸けて新型機「Cシリーズ」の開発を進めているが、座席数が110~130席の機体サイズで、こちらはもはやリージョナル機とは違ったカテゴリーになる。

――となると、最大のライバルはブラジルのエンブラエル?

間違いなく、そうだと思う。実際の商談でも、ほとんどのお客さんは三菱とエンブラエルのどちらにするかで悩んでいる。

エンブラエル改良型機との対決に勝機は?

最大のライバルとなる「E2」(写真:エンブラエル社)

――そのエンブラエルは、現行機を改良した「E2」の開発を進めています。MRJと同じ最新鋭エンジンを積むので、MRJの最大の強みである性能優位性が薄れます。

「E2」は現行機の設計をベースにしているので、同じエンジンを積んでも、少なくともMRJに4~5%の燃費優位性がまだ残る。ただ、現行機との比較では2割以上あったアドバンテージがかなり薄まるのは事実。その点は否定できない。

――エンブラエルはジェット旅客機で2000機以上の納入実績があり、多くの顧客をすでに有しています。さらに機体性能の優位性も縮まるとなると、MRJが勝つのは難しいようにも思えます。

われわれは新規参入だが、それでもすでに400機の受注を取れたのは、MRJのズバ抜けた機体性能に負う部分が大きい。実績などの大きなハンディを抱えながらも、これまではMRJの高い機体性能で突っ走ってきた。ただし、「E2」が出てくると、単純な性能差で受注を取っていくことは難しくなる。性能以外の部分、たとえばトラブルが少ない信頼性の高い機体であることも証明していきたい。

――これから先、エンブラエルとの販売競争に勝つには何が必要ですか。

機体だけでなく、エアラインに対するサポート体制や量産・納期、コスト競争力など、旅客機メーカーとしてのトータル的な実力、競争力が要求される。そういった意味で、ここから先はいわば総力戦。厳しい戦いになるが、三菱の力を結集して、エンブラエルの壁を突き崩したい。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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