東海原発で事故が起きたら日本は滅ぶ、原発に頼らない地域づくり目指す--「脱原発」宣言をした村上達也・東海村長に聞く

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--原発の安全性うんぬんと言うより、規制する体制に問題があると。

こういう体制の国では原発の安全性を守れない。なんぼ技術者が頑張ったところで、コントロール体制、基準体制ができていない。

--東海村は周辺人口が多い一方、火力発電所などがあり、脱原発をできるだけの経済的な裏付けがある。それに対して、ほかの自治体は原発依存度が高く、そう簡単に脱原発できない事情がある。

枝野幸男経産相にも申し上げたが、政府が脱原発を掲げるならば、同時にきちんとした政策を立てないといけない。つまりは、減原発、脱原発するうえでの財政的な支援、あるいは地域を維持していく支援を考えないといけない。

--中にはこれからも原発でやっていく、と明確に宣言している自治体もあります。

それを判断する材料は何になるかというと、私は福島第一原発事故だと思う。すぐに電力需給の逼迫だとか、停電だとか、電力料金の値上げだとか、立地地域の経済的依存だとか言っていたら、何一つ変れない、変わらない。

ドイツには倫理委員会というのがあって、哲学的、あるいは倫理的な観点から原発をどうするべきか、という提言がなされた。それでメルケル政権は原発政策を変えた。あのドイツと日本の差はどこなのかを考えてもらいたい。

原発事故というのは、われわれにとって人生観、歴史観を変えるくらいの衝撃的な事故だった。しかも、遠い国の話ではなく、日本で起きた。ドイツは日本で起きたことでそういうふうに変えた。
 
 まず原発をどうするか、という話があって、結局最小限のところで行こうじゃないか、という話ならわかるが、日本ではそういう前段もない。

確かに、これまで原発に依存してきたところが、100%原発に変わるものがあるかといったら、そんなものありっこない。しかしだとすれば、原発はいつまでも残る。

■脱原発後のビジョンを描くのは難しい

--脱原発については村民にどのように説明していくのですか。脱原発後の東海村のビジョンは。

10年くらいの長いスパンの中では、新しい原子力センターを立てる「原子力先端構想」のようなことを考えている。ただ、直ちに新たな道筋、となるとなかなか難しい。原発をやめると言っても、当面は安全性を確保するためにメンテナンスをしていかなければいけないし、その後の廃炉問題もある。

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