東海原発で事故が起きたら日本は滅ぶ、原発に頼らない地域づくり目指す--「脱原発」宣言をした村上達也・東海村長に聞く

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たとえば、大飯3、4号機はほかの原発や大飯1、2号機に比べてどうだとか、美浜1、2号機は廃炉にするとかそれくらい明確な違いや方針を打ち出せれば、大飯3、4号機は動くのだろうと思う。
 
 ところが、そのあたりをあいまいにしたまま、あわよくばなし崩し的に全原発50基を動かそう、あわよくば、上関(山口県)に新たな原発を作ろう、というのが見え見えだから、国民が不信感を持ってしまう。

そもそも、今の9電力それぞれに原発を持たせる政策が間違いだ。それぞれに原発を持たせた結果、この地震列島に54基も原発ができて、そのうえ減らせないという話になっている。
 
 電力の地域独占体制というのは極めていびつな形を招いた。終戦後に電力供給が経済成長の基礎だった時代はそれでよかったのかもしれないが、いまだに東西で周波数が違うなど、電力供給をきちんとやるにもパイプが不十分なままになっている。
 
 欧州では国をまたいで電力供給を行えるのに、日本では国内の電力会社同士間でさえまともにできない。今のような地域独占、集中生産、集中供給というのは、エネルギーの安全保障に極めて欠ける。何かが壊れたら、すべてがアウトになってしまう。

--原子力規制庁法案の審議も進んでいますが、新たな体制になれば規制体制は改善するでしょうか。

私ももともと、(国家行政組織法3条に基づいて設置され、独自に強い権限を有する)「3条委員会」にするべきだと言っていたけれど、国民からどれくらい「見える」のかがわからないのは不安だ。
 
 実際、既存の3条委員会である国家公安委員会や公正取引委員会は、内情が見えにくい。政府や原発推進機関から独立しているのはよいが、国民から見えにくいのであれば問題だ。

加えて、そのトップにそれだけの見識を持ったリーダーが就くのかどうかも心配だ。結局、財界か原子力ムラから引っ張り出してくるのだろうけど、哲学を語れる人なのかどうか。独立して行動をとれる人がいいけれど、日本社会ではそれは難しい。外国人を呼んでくるという話もあるが、結局は推進側に都合のよい人物を連れてくるのだろう。

--村上村長が就いたらどうですか。

やってもいいけど、選ばれればね(笑)。人生最後の奉公になるでしょう。


むらかみ・たつや
 1943年茨城県東海村生まれ。66年一橋大学卒業後、常陽銀行入社。97年9月東海村村長就任。現在4期目。

(倉沢美左 =東洋経済オンライン)

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