【グローバル人事の「目」】駐在員早期育成の最前線《3》--拠点によって異なる経営感覚

【グローバル人事の「目」】駐在員早期育成の最前線《3》--拠点によって異なる経営感覚

◆海外拠点の位置づけに応じて経営の勘所は変わる

実は海外拠点の位置づけの違いによって経営に求められる勘所は異なっている。ゆえに前回解説した方法で一律的に経営感覚の基本を身に付けさせるだけでは不十分である。今回は、海外拠点の位置づけにより異なる経営感覚を発揮させるために必要な能力・資質を知る勘所を解説する。

海外拠点の位置づけを知る視点は3つある。
(1)拠点の成長段階:立ち上げ、競争力創出、地域統合、グローバル統合
(2)拠点の役割:営業・販売拠点、生産拠点、本社の分身
(3)立ち上げ方式:自前かM&A。M&Aのときには本社と拠点の距離感=大枠管理、過渡期、統合・染め上げ

今回の連載ではすべてを網羅するスペースがないので、ここでは「経営感覚」の違いが分かりやすい(3)のM&Aの「大枠管理」と「統合・染め上げ」を取り上げて解説する。



◆同じ立ち上げ方式でも求められる経営感感覚はここまで異なる

「大枠管理」:買収先に一定の経営の自由度を与えながら、大枠で管理していくため、大きな方向性の共有に加え、財務・コンプライアンス面でのモニタリングが最低限必要となる。これらをスムーズに行い問題を未然に防ぐことが駐在員の重要なミッションとなる。よって財務数字が読めることは必須。数値から問題の存在を見抜く能力や、社内の雰囲気から法務的な問題の存在を察知する感覚が不可欠となる。これが欠けていると現地社員から舐められる結果となる。

また合弁の形態を取る場合は相手企業と様々な事柄についての「交渉」が不可欠となる。これに苦労しメンタル面で問題を抱えてしまわないように、交渉が楽しめる人物が求められる。

「統合・染め上げ」:自社やり方を徹底させるたに、自社独特のDNAを現地にわかりやすく伝えて浸透させることが必須となる。本社の仕事のやり方とその背景、意思決定のベースとなる価値判断基準を深く理解し、現地社員に対してなぜそのように考えて行動して欲しいかを粘り強く説明し、教育していくマインドが強く求められる。また自己開示も積極的に行い、社員との距離感を縮めることも大切になる。

このように、経営感覚の有無と同時に、本人の適性も課題になる。上記の例を考えてみても、「大枠管理」と「統合・染め上げ」では必要な適性は異なる。大枠管理では、主張欲、感応力、復元力、影響力、猜疑性、切迫性などが重要となり、染め上げでは、主張欲、感応力は共通するが、社交性、感謝欲、好印象欲、抽象概念理解力、柔軟性などが重要となる。

よって拠点のタイプ別に駐在員の人材要件を具体化し、適性の高い人をマッチングさせていかないとせっかく配属した駐在員が機能不全に陥り、逆に拠点経営の足を引っ張ることになるので、人事はここまでを視野にいれて配属を決めて欲しい。

松本利明(まつもと・としあき)
人事ジャーナリスト、コンサルタント、HRストラテジー代表、MSC(マネジメントサービスセンター)エクゼクティブアドバイザー
プライスウォーターハウスクーパース、マーサー・ジャパン、アクセンチュアのプリンシパルを経て現職。外資系・日系の大手から中堅企業までの組織・人材マネジメント改革に従事。クライアント数は18年間の累計で300社を超える。著書に 『M&Aを成功させる組織・人事マネジメント』(日本経済新聞社)。寄稿、講演多数。

 

 

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