《ミドルのための実践的戦略思考》ジェイ・B・バーニーの『企業戦略論 競争優位の構築と持続』で読み解く金属製品メーカーの人事課長・岩岡の悩み

《ミドルのための実践的戦略思考》ジェイ・B・バーニーの『企業戦略論 競争優位の構築と持続』で読み解く金属製品メーカーの人事課長・岩岡の悩み

■ストーリー概要:

グローバル金属工業の人事課長の岩岡は悩んでいた。「採用した営業担当者が使えない」という現場からのクレームを聞かされ続けるのは、もう勘弁してほしかった。

グローバル金属工業は、工場や物流拠点において必要になる棚などの保管設備を製造・販売している老舗メーカーであり、400人程度の規模の企業であった。この業界は比較的競争が緩やかであったためか、同社は長らく安定的に3位の座を維持しており、業績も堅調に推移していた。しかし、最近はコストの安い輸入品が入ってくるようになり、競争環境は乱れ始めていた。

同社の採用は新卒中心であったが、最近は中途採用も門戸を開けており、即戦力として採用する人も徐々に増えてきていた。しかし、知名度が低く、製造している商品のイメージもしづらい企業であるだけに、なかなか良い人材を採用することはできなかった。

「営業なんだからもっと愛想が欲しいよね」。「今度配属された社員、どうも行動力がないんだよな」。「そもそもうちの製品の特性ちゃんと理解してから入ってきているのかね」。営業現場の課長クラスと飲むと、たいていは新たに採用した人材の文句を言われる。その場では「お前らがうまく使っていないからだろう」と言い返すものの、「どうしたら営業現場で使える人材が採用できるのだろうか?」という思いは尽きることがなかった。

グローバル金属工業が中途採用を増やしたのには背景があった。昨年社長が交代となり、新社長は万年3位というポジションから脱却することを大きな目標として掲げていた。新製品プロジェクトなども立ち上がったが、それとともに目玉に据えられた施策の一つが営業改革であった。

営業改革のキーワードは「ソリューション営業への転換」。つまり、単に自社の商品を売るという自社製品ありきの営業手法ではなく、取引先企業の課題を定義し、その解決策を解きほぐし、最終的に自社製品を取引先企業の解決に結びつける、という営業手法である。

営業力強化のために、部署のトップ営業担当における共通項を洗い出したところ、このソリューション営業という営業手法を無意識ながら実践していた、ということがこの施策の背景にあった。営業担当者が自社製品を説明するだけの画一的な営業手法に限界を感じていた時であり、手詰まり感を覚えていたタイミングであったため、新しい営業手法の導入という方針について異論を唱える営業担当もいなかった。

しかし、実際にソリューション営業を理解・実践できる人材は限られた。顧客の話を聞くことは出来ても、実際に問題解決をし、自社製品と組み合わせて提案する、ということは簡単なことではない。

そんな背景の中、人事の代表としてソリューション営業プロジェクトに入った岩岡の大きな期待役割は2つだった。1つは、ソリューション営業力強化ということを理解し、実践力を高めるための問題解決型研修プログラムを企画・運営すること。そして、もう1つは、即戦力としてソリューション営業が出来る人材を、数多く採用することだった。ソリューション営業プロジェクトの営業本部長からの人事に対する期待は高かった。

研修については、すでに実施し、その結果に岩岡自身は手ごたえを感じていた。社内からの満足度も高く、口コミでも研修の評判は広がっているようであった。

しかし、採用はうまくいっていなかった。そもそも同社への転職を希望する人材のパイは限られていたし、提示できる条件からしてもそこまで選り好みができる立場ではなかった。もちろん岩岡は限られた選択肢の中からはベストな人材を採っているつもりだったし、妥協をしたつもりは一切なかった。それだけに、社員からの評価にはやりきれなさを感じるとともに、ある種の腹立たしさも感じた。「あいつらはこれだけの人材を採用する苦労を分かっているのか・・・」。岩岡はその言葉をぐっと飲み込み、今後とるべき対応策を考えていた。

 

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