21年目の調査捕鯨−−知られざる攻防

21年目の調査捕鯨−−知られざる攻防

調査捕鯨をめぐり反捕鯨活動家の拘束事件が南極海で起きた。日本はここ数年、調査捕鯨を急拡大、国際会合では多数派工作を進めてきた。問題に出口はあるのか。
(週刊東洋経済1月26日号より)

 日本の調査捕鯨をめぐる南極海での緊張が、これまでになく高まっている。

 事件は1月15日に起きた。環境保護団体「シー・シェパード・コンサベーション・ソサエティ」(本部・米国)の外国人メンバー2人が航行中の日本の目視採集船「第2勇新丸」に不法乗船、日本側はこれを拘束した。メンバー2人は乗船前、スクリューにロープを巻き付けようとするなど妨害活動を行っていたという。これに対してシー・シェパード側は「2人が人質にとられ、レーダーマストに縛り付けられている」などとする大げさな声明をホームページ上に出し続けている。

 シー・シェパードは国際環境保護団体「グリーンピース」(本部・オランダ)の創設メンバーだったポール・ワトソン氏が1977年に組織した。過激な行動で知られ、過去にアイスランドなどの捕鯨船を沈没させたこともある。国際捕鯨委員会(IWC)のオブザーバー資格も剥奪された札付きの団体だ。日本の調査捕鯨に狙いを定めたのは一昨年から。これまでにも発煙筒などを投げ込んだり、大型船を体当たりさせたりしてきた。今回も「ミガルー(白鯨の呼称)作戦」と称して、旗艦船「スティーブアーウィン号」を率い今月初めにメルボルン近郊を出港、13日には調査海域に到達していた。

 日本では知られていないが、ここ数年、環境保護団体の抗議活動は激化の一方だ。豊富な資金を誇る海外の団体はヘリコプター搭載の外洋船まで保有する。実はシー・シェパードが現れる前日にはグリーンピースの活動船「エスペランサ号」も捕鯨母船「日新丸」の追跡を開始、クジラ捕獲の動きがあれば実力行使に移る構えを見せていた。80年代末から抗議活動を展開してきたグリーンピースは「非暴力的手段」を掲げるものの、放水装置のついた高速ゴムボートを日本船の前方に回り込ませるなど、その行動は危険と隣り合わせだ。一昨年には大型船同士の衝突事故も発生している。

 「クジラを捕らせない権利がある」(グリーンピース・ジャパン)というのが実力行使に出る両団体の主張だが、日本側関係者は彼らを「環境テロリスト」とあしざまに呼び、最近は放水による排除活動も行うようになった。宣伝合戦を含め、両者の対立は先鋭化するばかりだ。

米国からの要請でザトウ捕獲見合わせ

 南極海で激しい衝突が始まった一方、実は政府間でも調査捕鯨をめぐる駆け引きは昨秋来にわかに慌ただしさを増している。発火点はオーストラリアでの政権交代だ。昨年11月の総選挙で勝利した労働党政権が掲げる重要公約の一つが「反捕鯨」。12月19日には外務・環境の両大臣が会見を開き、日本の違法行為の有無を監視するため税関巡視船を派遣することなど行動計画を公表した。

 そうした中、一つの焦点として浮上したのが「ザトウクジラ問題」だった。日本は今年から新たに大型種であるザトウクジラを50頭捕獲する計画を立てていた。が、ホエールウォッチングの対象となることの多いザトウクジラは、オーストラリア国民にとって特別な存在。それもあり、同国での反捕鯨キャンペーンはかつてない盛り上がりを見せた。

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