傾きマンション、問題はどこまで波及するか 全国で施工した過去3040件をチェック
「ようやくマンション内で友達も増えてきたのに、しばらく散り散りにならざるをえないでしょうねぇ」──。
分譲当初から入居しているという70代の女性は、穏やかな口調の中にも、隠せない憤りをにじませた。
三井不動産レジデンシャルが売り主、三井住友建設が元請けとして施工を手掛けた、横浜市都筑区の大型マンション(全705戸)が“傾いた”問題。このマンションの住人のみならず、世間に大きな不安を与えた。今後の調査結果次第では、2005年に発生した耐震偽装の「姉歯事件」を上回る、大きな問題に発展する可能性も秘める。
現場リーダーは「故意ではない」と主張
問題のマンションは、2011年に国土交通省が後援する土地活用モデルの審査委員長賞を獲得し、2007年の竣工当時から話題を集めていた。大型の商業施設が隣接し、小・中学校は徒歩5分圏内と、ファミリー世帯に人気の物件だ。
そのマンションの土台が文字どおり揺らいだ。2次下請け施工業者の旭化成建材が、建物を支える基礎となる杭473本のうち重複を除く70本(単純合計では83本)、実に7本に1本の割合で、杭の深度や杭を固定するためのセメントの量について、データを改ざん。改ざんは全4棟のうち、南棟、中央棟、西棟の3棟に及んでいた。
データ改ざんだけではない。西棟は実際に2センチメートル超、傾いているのだ。現時点では少なくとも8本の杭が支持層に十分到達していないことが明らかになっている。
3棟の施工を手掛けたチームのリーダー格である現場代理人は、データの改ざん自体は認めたものの、ミスによるもので故意ではないと主張。工事についても「問題はなかった」と答えている。