傾きマンション、問題はどこまで波及するか 全国で施工した過去3040件をチェック

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会見中に涙ぐんだ旭化成の浅野敏雄社長(撮影:尾形文繁)

発言内容には整合性が取れない部分もあるようだが、10年前の記憶と記録を基にした調査には限界がある。実態を解明するには、やはり実地調査しかない。西棟に関しては10月19日から再度の地盤調査が始まっており、残りの3棟についても11月以降に調査が開始される予定だ。

“主犯”格の旭化成は、現時点では杭以外が原因でマンションが傾いた可能性もゼロではない、との見方を示している。

20日に開いた記者会見では、質問に対して「調査中」との回答を連発。核心部分について言及を避けるケースが目立ち、浅野敏雄社長が涙ぐむシーンもあった

当初は「震災のせい」と責任回避

問題発覚の端緒は2014年11月。住民が西棟と中央棟をつなぐ渡り廊下のズレを見つけて、三井不動産レジデンシャルに連絡したことから始まる。当初、同社は「東日本大震災の影響も考えられる」と住民側に説明する一方で、同年12月にはボーリング調査に着手していた。

事態が動きだしたのは、ボーリング調査開始から、8カ月も経ってからだ。三井不動産の対応に不審を抱き続けていたマンション管理組合が横浜市に調査を依頼。住民の声を受けて、今年8月に横浜市が現地調査に入り、手すりや床のズレを確認した。

この時点で横浜市は調査勧告を行ってはいない。横浜市が調査に入って1カ月後の9月15日、三井不動産と三井住友建設は、自主的に横浜市に施工不良を報告した。

最初の住民説明会は10月9日に開催。当初はマンションの補修や、具体的な補償の話は、何も出なかったという。潮目を変えたのは横浜市だった。14日には、横浜市が同マンションの施工不良について記者会見を行い、世間に問題が広く知れ渡っていった。

そして翌15日夜の住民説明会の場に、三井不動産レジデンシャルの藤林清隆社長が初めて出席する。その場で、傾いた西棟を含めて、4棟すべてを一括で建て替えることを、基本的な枠組みとして提案したのである。

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