ついにアメリカが中国の増長を非難し始めた 南シナ問題を巡り中国への態度を硬化

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米国はこの中国の立場に同調しているわけではないが、仮に、中国の考えに立っても米艦は中国の領海内を通航できるという判断だろう。どこの国の領海においてもいわゆる「無害通航」が認められているからだ。軍用船でも構わない。それは「無害」でなければならず、たとえば軍事行動を行なうことは認められないが、米艦の立ち入りは「無害通航」の要件を満たす。

つまり、米艦による12カイリ内への立ち入りは、米国としては「公海上の自由通航」であり、他方、中国の立場に立つと「無害通航」となる性質のものであるが、どちらであっても認められるはずである、というのが米国の読みなのだろう。

中国の規定に理はあるのか

中国は他国の軍用船が中国の領海内を通航するには中国政府の許可が必要(領海法第6条)としている。これは国際法に違反している規定であり、それに従うことはできないというのが米国の考えだ。これは米国一国だけの解釈でなく、日本を含む大多数の国の立場だ。

一方、中国の軍用船は他国の領海を通過する際、その政府の許可を得ていない可能性がある。習近平主席の訪米の直前、中国の艦船が日本海でロシア海軍と共同演習を行なった後、ベーリング海の米国の領海内を通航した。中国艦船の航行は国際法に従って行われ、問題になる行動はなかったと米国防総省も認めた経緯がある。その際、中国の艦船が米国政府の許可を取っていたか不明だ。

しかし、中国の艦船は以前から沖縄の付近で、日本政府に許可を求めることなく、日本の領海内を通航している。そこまでは国際法上問題ないとしても、潜水艦が2回に1回くらいは潜航したまま通航している。これでは「無害通航」の要件を満たすことはできない。

もちろん、米艦の12カイリ内への立ち入りは法的に問題ないとしても、強い政治的な意味合いがある。米国は当然そのことを承知のうえで強い姿勢を見せている。

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