独占取材!エヴァ新幹線はこうして生まれた ファン待望のコラボ列車の製作現場に潜入

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パーツのすき間に、劇場版エヴァに登場する女性キャラクター「真希波・マリ・イラストリアス」の等身大パネルが見えた。梱包材に包まれたほかのパネルは「綾波レイ」や「惣流(式波)・アスカ・ラングレー」のようだ。

作業着姿のJR西日本スタッフに混じって、明らかに場違いな普段着の若者が隅のほうに数名並んでいた。その中には、床にしゃがみこんでノートパソコンで作業に没頭している人もいた。おそらくコックピットの開発関係者なのだろう。

「体験中に流れるエヴァ発進のセリフをどうしましょうか」。若者たちの1人がスマホでこんな会話をしていた。機器を搬入する当日でも、ソフトの作業は続いているようだ。

コックピット搬入は意外と難航

搬入作業は10時にスタートした。1号車の客室は内装がまったく施されていない状態だ。そこへパーツを搬入、組み立てて、配線も行う。これらの作業を夕方までに終える予定だという。客室内の奥には、むきだしとなった運転席が見えた。

コックピットのサイズは長さが3.4メートル、高さと幅がそれぞれ1.4メートルという大がかりなものだ。新幹線の通路から搬入できるよう、あらかじめパーツ単位に分解されている。それでも、あらためてサイズを測ると、木枠で固定されている分だけサイズが大きくなり、そのままでの搬入は無理だとわかった。

スタッフたちはコックピットのパーツをさらに小さく分解し始めた。搬送中にパーツが動いて、車両に傷を付けることがあってはいけない。パーツが動かないように角材を使って台車に固定して、フォークリフトで台車ごと車内に運び入れる。何度も往復し、すべてのパーツを車内に運び入れたのは12時すぎ。搬入作業だけで2時間を超えてしまった。

昼休みをはさんで、午後は車内での組み立て作業が中心。運び込んだパーツから木枠を取り外し、組み立てたコックピットを車両にがっちりと固定する。「時速300キロメートル近くで走ると、細かい揺れもあります。絶対にはずれたりすることがないよう、最新の注意を払っています」と、担当者は言う。

現場作業員のプライドを懸けた作業の集大成として生まれたエヴァ新幹線。その全容とJR西日本の戦略を、10月24日配信の「徹底解説!エヴァ新幹線はどこがスゴいのか」で深掘りした。併せてお読みいただきたい。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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