女性醸造家の渾身のワインに世界が驚嘆した

日本固有の甲州種で目指すワインの革新<上>

世界最大級のワインコンクール「デキャンタ・ワールド・ワイン・アワード」で金賞を受賞した

金賞受賞が公表されると、中央葡萄酒グレイスワイン、そして彩奈の名は、一気に世界に拡散。彩奈はこの受賞によって日本における女性醸造家の第一人者として名を上げたが、「キュヴェ三澤 明野甲州2013」が生まれるまでの苦悩は、あまり知られていない。

この白ワインは、1000年以上の歴史を持つ日本固有のブドウの品種「甲州」を使って造られている。甲州種はその特徴から、絶対に世界的なコンクールで金賞は取れないと言われてきた。その定説を覆す快挙の裏には、一時、「醸造家を辞めよう」とまで思いつめた彩奈と甲州種との長い格闘の日々でもあった。

目から鱗のフランス留学

彩奈が甲州種ブドウを使ったワインの醸造を意識し始めたのは、大学3年生のとき。父親に連れられて行ったマレーシアのクアラルンプールで、あるカップルと出会ったことがきっかけだった。彩奈と父親はマンダリンオリエンタルホテル内にある「Wasabi」というレストランで、自社ワイン「グレイス甲州」のプロモーションを行っていた。そのとき、ホテルに宿泊しているアジア人と西洋人の夫婦が、毎日Wasabiに通ってグレイス甲州を1本空けていることを知ったのだ。

マレーシアでの体験が、甲州ワインの可能性を感じる転機となったと語る三澤彩奈さん

「街には食べるところがたくさんあるのに、毎晩、同じ店で私たちのワインを飲んでくれているなんてすごいと思いました。しかも、ご夫婦に『日本を表現しているようなワインでいいわね』と言われたんです。そのとき、甲州ってそういう力もあるんだと可能性を感じて、この品種がこれからどうなるのか、私も関わってみたいと思うようになりました」

彩奈は、祖父や父親が「甲州種ブドウなんて2流」と言われていた時代から、甲州種ワインのポテンシャルに人生を懸ける姿をずっと見てきた。

ワインを醸造する際、アルコール度数の高さはブドウの糖度の高さに比例する。甲州種はワイン用のブドウとしては糖度が上がりにくく、潜在アルコール度数が10%に満たないものがほとんどだった。アルコール度数が低いということは、風味や香りが控えめなワインになってしまう。従来の甲州種を使ったワインは、良く言えば「爽やかで飲みやすい」、悪く言えば「ペラペラで水っぽい」と評されてきた。

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