為替ディーラーは円相場の大荒れを予想する ドル円レートを左右する"中国景気"

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1ドルを何円で買えるかを示すのが、ドル円の為替レートだ。2012年10月は1ドル=80円だった。それが今は120円。たった3年の間に40円もの円安ドル高が進んだ。輸出企業がその恩恵を受け業績を伸ばす一方で、原材料の多くを輸入に頼る内需企業には打撃となった。食品の値上げなど、私たちの生活への影響も小さくない。

ではこの先をどう考えればよいのか。為替取引の最前線で働く専門家に尋ねて回った。

「米FRB(連邦準備制度理事会)や日本銀行の追加緩和なんかよりも、中国の先行きのほうがはるかに不安要素だ」

ある総合商社の若手為替ディーラー、Aさんはこう吐露する。ディーリングルームでは“中国が次に何をしでかすか”という話題で持ち切りだという。

上海総合指数や人民元レートに目を配る

8月の世界同時株安を境に、中国経済の動向が株価や為替相場を乱すようになった。Aさんは毎日、目を皿のようにして上海総合指数や人民元レートの値動きをくまなく追う。そうしたデータの変化から「市場参加者がリスクを取りに行くのか(リスクオン)、それとも回避するのか(リスクオフ)を判断する」。

ドル円レートでいえば、リスクオフ時には“安全通貨”とされる円が買われ、円高ドル安になりやすい。どの通貨の動きを追うにしても、市場のリスク姿勢の把握は不可欠だ。

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「ドル円10本!」「イチマル・イチゴー!」

ここは、三菱UFJ信託銀行のディーリングルーム。市場での取引を担うディーラーや、企業や投資家といった顧客の取引を請け負うセールスなど、30人ほどの為替部隊が働く。大きな黒い受話器を握りしめ、1日200件以上の電話を取る。4つ5つの画面を見ながら、2つ3つのキーボードをたたく。時には怒号のような声も飛び交う。一種の“戦場”である。

「ドル円10本」とは、顧客から為替取引の注文を受けた際、セールスがディーラーに伝える言葉だ。100万ドル×10本、つまり1000万ドルを買いたい顧客がいるので、円がいくら必要なのかレートを提示してほしいという意味である。

「イチマル・イチゴー」は、それを受けてディーラーがセールスに示した取引可能なレート。そのときのドル円レートの大台が1ドル=120円であれば、買いたいとき(ビッド)は120円10銭で買える。売りたいとき(オファー)は120円15銭で売れる、ということを表す。

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