「JR会社法」に隠された本当の目的とは何か JR社員は「みなし公務員」だった?

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JR発足時には経営基盤の脆弱性が指摘されていた、JR九州の株式が2016年に上場される(写真 : 苦行僧 / PIXTA)

「ななつ星」をはじめとする、特徴ある列車で話題を振りまいているJR九州の株式が2016年に上場される。JR会社の株式上場としては1993年のJR東日本、1996年のJR西日本、1997年のJR東海の「本州三社」に続くものである。

JR九州はJR四国やJR北海道とともに「三島会社」と呼ばれ、1987年のJR発足時には経営基盤の脆弱性が指摘されていた。その脆弱性を克服するためJR九州には3877億円もの経営安定基金が交付されている。諸課題はあるにせよ、JR九州が28年の後に株式上場へとこぎつけたということは、国鉄改革を知る者にとっては感慨深いものがある。

国鉄改革の真の目的とは

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元々JR7社(JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州、JR貨物)の事業は、日本国有鉄道法に基づく公共企業体としての日本国有鉄道により一体的に運営されていた。しかし、その事業は、1986年の日本国有鉄道改革法(以下「国鉄改革法」)に基づく「旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律」(「JR会社法」)が制定されたことにより、1987年に6つの旅客鉄道会社と1つの貨物鉄道会社という株式会社に承継され、今日に至っている。

このいわゆる「分割民営化」の根拠となった国鉄改革は、国鉄が1970~80年代にかけて「公共企業体による全国一元的経営体制ではその事業の適切、健全な運営を確保することが困難」となり、「輸送需要の動向に的確に対応できる新たな経営体制を実現」し、「その下で日本の基幹的輸送機関としての機能を効率的に発揮させることが国民生活や国民経済の安定や向上を図るために緊要な課題」となったことから、「これに即応した効率的な経営体制を確立するため」(以上国鉄改革法第1条・文言は適宜修整)に実行されたものである。

国鉄の鉄道輸送に対する責務(「主要都市間の中距離幹線輸送、大都市圏や地方主要都市圏における輸送その他の地域輸送の分野において果たす役割」・国鉄改革法第6条・文言は適宜修整)を生かすためにより良い方策として分割民営化が選択されただけであって、国鉄が担っていた責務がなくなったわけではない。

あくまでも、国鉄が担ってきた責務を「その役割を担うにふさわしい適正な経営規模の下において旅客輸送需要の動向に的確に対応した効率的な輸送が提供されるようその事業の経営を分割するとともに、その事業が明確な経営責任の下において自主的に運営されるようその経営組織を株式会社」としたのである(国鉄改革法第6条)

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