第一中央汽船が破綻、商船三井は救うのか 中国バブル崩壊による資源安が直撃

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民事再生法が適用されたとしても、過剰投資のツケは重くのしかかる。負債総額1764億円の圧縮については、メインバンクである三井住友銀行の支持は得られているようだ。

再生の焦点は、船隊のスリム化である。第一中央汽船の場合、国内外の船主から借りるレンタル船を主体にしているが、今は運賃市況が借船料を下回る「逆ざや」に陥っている。今後は借船料を、運賃市況に連動して引き下げてもらえるよう、船主に要請するという。ただ薬師寺社長は「外航船隊は現状120隻あるが、実際の貨物量から考えると40隻程度で足りる。が、売りに出しても売れないし、借りたいという海運会社もいない中、単純に契約を解約することはできない。船主にも耐えてもらいながら、時間を稼ぐしか、私たちにはできない」と漏らす。再生は依然、船主の連鎖倒産の危険と、隣り合わせだ。

「現実的にはスポンサー企業に入ってもらった方が、信用不安を抑えられるが、それを商船三井に頼めるのか、自主再建で行くのかという点も、全く白紙」(薬師寺社長)という。中国市場の早期回復が期待できない中では、運賃市況の低迷はさらに1~2年は続くと見られる。中国を中心に膨大な造船能力も維持されており、運賃市況が上向けば、また投機マネーが流入するという見方も多い。

9月にはモナコ船社のグローバル・マリタイム・インベストメンツも米国破綻法の申請を余儀なくされた。中国バブルの崩壊から始まった、海運業界の“異変”は、なお業界再編の火種を抱えたまま、収束への道筋が見えないでいる。

岡本 享 東洋経済 記者

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おかもと とおる / Tohru Okamoto

一橋大学社会学部卒。機械、電機、保険、海運業界などのほかマーケットを担当。2013~2015年『会社四季報プロ500』編集長、2016年「決定版 人工知能超入門」編集長、2018~2019年『会社四季報』編集長。大学時代に留学したブラジル再訪の機会をうかがう。

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