【産業天気図・ソフト/サービス】需要旺盛だが、リスクは人手不足による赤字開発

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ソフト・サービス業界は依然活況。経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、業界売上高は直近の07年1月7080億円と前年同月比7.2%増の好伸で、前年同月を上回るのは4カ月連続。この伸びは当面続く見通しで、NTTデータ<9613.東証>など主要企業は来08年3月期も金融・公共関連で需要が拡大することを確実視している。ただ、本欄で従来から予測してきた業界の天気「快晴」を、今回は雲が散見される「晴れ」へと一段階引き下げた。“書き入れ時”ながら、そのため逆に人手不足や過剰受注などが発生し、採算が悪化する企業が出始めたためだ。
 たとえばTIS<9751.東証>は07年3月期の業績予想を下方修正し、増益予想から一転、11億円の営業赤字に転落する。原因は大型システム開発で大幅に人員を追加したため。同社はクレジットカード関連システムに強みを持ち、その技術力には定評があるが、必要人員の読み違えという初歩的なミスが響く。富士ソフト<9749.東証>や日立情報システムズ<9741.東証>でも、すでに止血策は講じたものの、今期は人手不足に起因する赤字プロジェクトが生じた。こうしたケースは、ピラミッド構造となっている当業界の「中腹」、すなわち中堅のシステムインテグレーターやソフトハウスでも起こっている模様。業界のベンチマーク企業とされる野村総合研究所<4307.東証>やNTTデータでさえ、07年3月期は絶好調ながら、人手不足感が顕著で開発現場が疲弊していることを隠さない。06~07年度にかけ、業界は総じて活況にもかかわらず、社によって収益はまだら模様になりそうだ。
 こうした中、日本ユニシス<8056.東証>がネットマークス<3713.東証>の買収を発表するなど、開発力確保を狙った合従連衡の動きが鮮明化している。伊藤忠テクノソリューションズ<4739.東証>やフューチャーアーキテクト<4722.東証>も、すでに07年3月期中にM&Aで規模を拡大した。このような“動員力の手当て”ができるかどうかが、07年度を占うカギとなろう。
【杉本りうこ記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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