長久手市、「快適度日本一」の街が目指すもの 2期目の市長の目標は「わずらわしい街」

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――1期目での達成度は。

まだ始まったばかり。時間がかかるのは仕方ない。これまでの役所の総合計画も、時間がかかっていいから市民につくってもらうことにした。これまではコンサルや学者に任せ、単年度でつくり上げるものだった。もうそういう時代ではない。

課題は多様な価値観を持つ人をどう集め、どう議論をまとめていくか。役所もまだ広報が下手だったり、市民の皆さんもまだ慣れていなかったりする。これも時間をかけて、少なくとも次の4年間では「みんなで街をつくるのは面白いんだ」と思ってもらえるようにしたい。

今は5万人の街に、65歳から75歳までの市民は5000人ほどいる。その中で、街を何とかしようと立ち上がるリーダーは増えている。そういう人たちにちゃんと報酬も払って、地域の仕事をしてもらいたい。

決裁書類を半減させることが目標

――行政職員の意識も変わったか。

職員にはとにかく「街へ出ろ」とはっぱをかけた。市民と触れ合い、どんな課題があるかを知ってこいと。自分たちで判断させるために、決裁書類は半減させることにした。まちづくり協議会にも職員が入り、担当者が自分で書類をつくる。役所にいるとどうしても縦割りで考えてしまうが、現場ではそうはいかない。

オレンジ色のベストには 「まちづくり、まずは笑顔でこんにちは」の標語

私もこの4年間で、役所の文化がようやく分かってきた。新しい課もつくったが、担当者が異動を繰り返すと結局は「今までやってきたから」と前例主義になってしまう。だから2期目はすべての継続事業について「なぜやるのか」をレポートで書かせることにした。今まで人事にも口を出していなかったが、これも考えをあらためようと思っている。こんなことを公言するのは初めてだが。

――あらためて2期目の抱負を。

元気な人もお年寄りも「あなたはこの街に必要なんだ」と言える仕組みをつくりたい。それでも寝たきりになってしまったら、一人ひとりをみんなで助ける。そして古里の森を子どもたちに残す。

この街は高速道路もなかった時代、先人が区画整理事業をしてつくってくれた。行政ではなく、力を合わせた市民のおかげだ。今こうして評価されているのは、50年前の基盤があるから。今度は私たちが50年先のために、いい街をつくらなければならない。そのときまた東洋経済さんにも評価してもらえるように。

関口 威人 ジャーナリスト

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せきぐち たけと / Taketo Sekiguchi

中日新聞記者を経て2008年からフリー。名古屋を拠点に地方の目線で環境、防災、科学技術などの諸問題を追い掛けるジャーナリスト。1973年横浜市生まれ、早稲田大学大学院理工学研究科修了。

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