オリンパス不祥事に海外投資家は何思う--リチャード・カッツ

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日本の企業に共通する問題点

確かに日本の企業統治には多くの問題がある。バランスシートを実際よりよく見せている日本企業がほかにもあることに疑いの余地はない。しかし、こうした問題について投資家が他国よりも日本のほうがひどいと見ることはなさそうだ。

その理由は、この10年、エンロン、MCIワールドコムをはじめ、多くの米国企業で不祥事が起きたからであり、ウォール街における金融上の不正行為の余波が続いているからであり、投資家はオリンパスの不祥事の記事を読んだのと同じ日に、米判事が米シティコープと米証券取引委員会(SEC)の2億8500万ドルの和解合意を認めないと示唆した記事を読むことができたからである。

政府認定の公益社団法人、会社役員育成機構のニコラス・ベネシュ代表理事が指摘したように、「日本の企業統治の問題は必ずしも米国よりひどいわけではないが、異なった特徴が確かに見られる」。

問題は、企業の不正行為が起きたとき、日本の株主には何らかの行動を起こす権限がほとんどないことだ。たとえば、ベネシュ代表理事は「日本の株主は米国と同じように集団訴訟を利用することができず、強い証拠開示権限を持たない」と語った。

さらに悪いことは、日本生命保険、テルモ、シャープなどのオリンパスの安定株主が同社に自浄の取り組みを求めることをひどく躊躇してきたという事実だ。これらの企業では、安定した株式持ち合い制度を通して現行の経営陣同士が庇護し合う古い慣習が続いている。

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