米国は増大する「監獄コスト」をどうすべきか 囚人の数はついに220万人を突破

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米国初のSIBは、ニューヨーク市にあるライカーズ島刑務所の少年受刑者の再犯率低減を目的としていた。第三者の評価者らは先月、同市が掲げた目標を達成できなかったと結論付けた。

しかし、ライカーズ島での事業は失敗どころか、成果主義が有効だと実証した。ニューヨーク市は事業コストを引き受ける必要がなかったし、当局はうまく機能するものとそうでないものとを判別する貴重な知見を得ることができた。この経験に基づいて、ニューヨーク州が実施する別の再犯率低減事業に向け、他の米国企業がSIBを開発中だ。

実際に、再犯率低減を目指す多くのパイロット事業が、全国規模で実施されようとしている。マサチューセッツ州も成果主義の実験を行ったほか、ミネソタ州とテキサス州が行った事業も期待できる成果を得た。ジョージア州は米司法省から600万ドルもの助成を受け、15の個別事業に資金支援を行っている。その内容は出所者の職業訓練や住宅供給支援から、服役者に向けた宗教的なプログラムまで、多岐にわたる。

二大政党がともに支持

これら国家規模の事業は、クラウドソーシングに似ている。各種の革新的なアイデアを試す上では効果的な手法であり、成功すれば、より大規模に展開できる。

ここで、進歩的な連邦主義が関わってくる。連邦政府は、資金の提供と、最も効果的な手法を推進することで各州の努力をより強化するよう働きかけられる一方、事業自体に特定のイデオロギーを押しつけることを避けられる。

たとえば、ジョージア州が連邦政府の支援で実施している再犯率低減事業は民主、共和両党の支持を得ているため、「進歩的な」戦略と「保守的な」戦略の双方を織り込んでいる。

また、連邦政府の犯罪対策に関する新法案には成果主義による契約が盛り込まれ、各州が犯罪に対してより賢明な取り組みをとるよう促すものとなっている。懲罰の規定を緩和するとともに、効果的な再犯率低減事業には投資を行う内容だ。

このような取り組みならば、投獄率や再犯率を下げられるだろう。そして、服役に伴う厄介な社会的・経済的・道徳的なコストを大幅に減らせるのではあるまいか。

ローラ・タイソン 米大統領経済諮問委員会元委員長

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Laura Tyson

米カリフォルニア大学バークリー校教授。ロック・クリーク・グループのシニアアドバイザー。

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レニー・メンドーサ

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マッキンゼー·アンド·カンパニーのワシントンDC、およびサンフランシスコオフィスの名誉退職者(引退したディレクター)。

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