カタログ通販のニッセン、「連続赤字」の泥沼 親会社セブン&アイも黒字化支援に手こずる

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撤退することなった大型家具のカタログ誌面

セブン&アイは、全国に約1万8000の店を抱えるセブン-イレブンの店頭で、グループ会社のインターネット通販商品などを24時間受け取ることができる「オムニチャネル戦略」をこの秋から本格的にスタートする。セブン&アイがニッセンを傘下に引き入れたのは、同社が長年培ってきたコールセンターのノウハウや、物流拠点を取り込むためだった。

セブンは同時に、買収直後からニッセンにテコ入れを行ってきた。2014年3月にはセブン-イレブン・ジャパン出身の永松文彦氏がニッセンの副社長に就任。きめ細かく消費者のニーズを取り込もうと、カタログ発行回数を5回から8回に増やすなど、新たな戦略を打ち出してきた。だが結局売り上げは伸びず、2014年度の赤字幅は当初の計画よりも拡大。不良在庫を多数抱えたことにより、2015年度も採算悪化の一因となっている。

「価値ある商品が作れていなかったのに、カタログだけ増やしても意味がない」(セブン&アイ役員)。そこで2015年度は一転、カタログの発行回数を元に戻し、部数やページ数も減らしてコスト削減を進める一方、商品開発や売り方を抜本的に見直す。

商品戦略で迷走

まずは品ぞろえを絞りこむ。これまでは売り上げを伸ばすために、外部倉庫まで借りなければならないほど商品数を増やしてきたが、ブランド別に管理をしてきたために似たようなものが多数でき、売れない商品を抱えることになってしまっていた。今後はカテゴリーごとの管理を徹底する。

さらに市場社長自身が「これまで低価格がニッセンのシンボルとされてきてしまったのがそもそもの間違い」と認めるとおり、価格重視の戦略を見直す。今後は品質を高めると同時に、価格も上げた商品の数を増やす。たとえばワイシャツはこれまで2000円以下のものが大半を占めていたが、今後は1000~4000円ほどに価格帯を広げ、これまで取りこぼしていたニーズをくみ取る。

だが、ファストファッションやネット通販が台頭し、いつでもどこでも好きなものが手に入る時代に、カタログ通販が成長を遂げるのはそう簡単ではないだろう。ニッセンも限定商品の拡充などでネット経由の販売強化に力を入れると同時に、この秋からセブン-イレブン店頭での商品受け取りサービスも始める。

「これまでは何をどう売り込んでいくのか、PDCA(計画、実行、評価、改善)ができていなかったと思う。いかに消費者のニーズを把握し、品質の高いものをどのように作るのか、こうした考え方をセブンからニッセンに行っているメンバーを中心に変えているところ」(セブン&アイ役員)。強力な助っ人の力も借りて、長い苦境から脱することはできるか。

田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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