《プロに聞く!人事労務Q&A》会社に報告なしに副業をしている社員を処罰できますか?

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《プロに聞く!人事労務Q&A》会社に報告なしに副業をしている社員を処罰できますか?

質問

弊社では就業規則で社員の副業を禁止しています。ところが、最近になって社員の1人が、自分のマンションを賃貸して家賃収入を得ていることがわかりました。1部屋ではなく、1棟を所有して賃貸しています。物件は管理会社に任せているので、本業をおろそかにしているわけではありませんが、就業規則違反に変わりはありません。この社員へペナルティを課すことはできますか?

回答
回答者:鈴木社会保険労務士事務所 鈴木ひろみ

就業規則違反をしたのであれば、就業規則の規定に沿ってペナルティを課すことになります。
御社の就業規則を確認してみましょう。就業規則違反をした場合、懲戒を課すことになっていれば、懲戒規定に従って行います。

御社が当該社員に対するペナルティのレベルがどれくらいを検討しているか不明ですが、本業をおろそかにしてない、御社と競業する副業をしていたわけではない等を考慮すれば、(御社の懲戒規定の種類が分かりませんが)訓告や始末書等を行うことになるでしょう。

●懲戒を行う場合に気をつけること

労働契約法第15条では、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」と規定されています。

つまり、懲戒の原因となった社員の行為や程度等の事情を考慮して懲戒処分を判断する必要があります。例えば、大した行為でないのにもかかわらず重い処分をした場合は、権利濫用として無効となることがあります。今回の社員が侵した行為と懲戒処分が釣り合うものでなければなりません。

●社員の副業について、今後の会社の対応をどうする?

社員の副業について禁止している会社も多いようですが、昨今の不況に伴い、社員の副業について禁止から許可制等副業について認めている企業も増えてきています。
会社の収入だけでは生活が厳しい、どうしても副業で生活費を稼がなければならない等の労働者側の理由から、また、会社側も賃金をこれ以上は増やせないとして、副業を認める動きが見受けられます。

そもそも副業を禁止する理由として、(1)副業のために遅刻や欠勤が多くなる、(2)競合する業務の場合に会社の利益が損なわれる、(3)会社固有の技術やノウハウが漏洩される、等が挙げられます。

また、副業禁止の規定は、労働基準法などの法律で定められたものではなく、会社就業時のルールであり、憲法で保障された働く自由を侵すものであるという考えもあります。近年、会社の許可制のもと副業を認めるケースも出てきています。内緒で社員が副業をするよりも、会社の管理のもとで副業をしてもらった方が安心です。御社でも検討してみても良いでしょう。


 

鈴木ひろみ(すずき・ひろみ)
東京都社会保険労務士会所属。法政大学法学部法律学科卒業。東映CM入社。TV-CMの製作進行、プロダクションマネージャーとしてTV-CMの企画・製作を担当。その後、ファッション雑誌編集者を経て、1995年に鈴木社会保険労務士事務所を開設。著書に「どうなるの?わたしたちの労働環境」、「得する年金損する年金 図解新年金制度」など。


(東洋経済HRオンライン編集部)

 

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