いつの間に「宇宙」は戦争の瀬戸際にあった 米・中・ロの間で新しい冷戦が勃発している

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2014年10月、米軍の極秘無人シャトル「X-37B」が22カ月ぶりに地球に帰還した。可能性は低いものの、このシャトルは兵器としても利用できる(提供:Vandenberg Air Force Base/ロイター/アフロ 9

ひそかに、そしてほとんどの人が気付かないうちに、世界の宇宙先進国である米国、中国、ロシアは、宇宙空間に新型の洗練された兵器の配備を進めてきている。

地球周回軌道はますます地上の延長線上になってきており、大規模な軍備が進んでいる。その実情は、戦争が起こる寸前だ。

周回軌道においては、待ち伏せする「偵察」衛星の数も増加しており、今も、「他の衛星に忍び寄って無力化せよ」との命令を待っているかもしれない。地上では、ますますロケット弾を発射する軍艦や強力地上設備が増えている。このロケット弾は正確な誘導システムを備えており、周回軌道上にある敵側が持つ宇宙機体を破壊することが可能だ。

周回軌道上での戦争は、ナビゲーションや通信、科学調査や軍事偵察などで世界が依存しているデリケートな衛星群をも破壊しかねない。周回軌道上の破壊行為が広がれば、どうなるか。人類は技術的な時間をさかのぼりかねない。まるで、「第2次世界大戦時に戻れ、産業化時代に戻れといった具合だ」と米国空軍宇宙軍団のジョン・ハイテン大将はテレビ番組「60ミニッツ」の中で語っている。

多くの衛星が「軍民両用」

周回軌道上にどれだけ多くの兵器があるか、正確なことは分からない。なぜならば、多くの宇宙における機体が「軍民両用」だからである。平和利用といえども、潜在的に軍事用途に利用できる機能を持っているのである。

一般にも知られている用途変更として、表面上は周回軌道上での修理作業目的に構成された偵察衛星がある。この衛星は、レーザー、爆発物、メカニカルなかぎつめによって他の人工衛星を排除するキラー衛星(ロボット暗殺者)にもなり得る。

しかし、攻撃する瞬間までキラー衛星は無害に見える。これが厄介なところだ。この軍民両用性は運用者にとって政治的な方便にもなっている。米国は宇宙兵器を他のどの国よりも多く所有しているが、そう言われる所以はないと否定している。「60ミニッツ」がデボラ・リー・ジェームス空軍長官に米国が宇宙空間において兵器を所有しているかどうかを質問したところ、あっさりと「所有していない」と回答した。

もちろん、そんなことはない。

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