「母に支配される娘」のどうにもならない葛藤 愛情という名の心理的虐待は根が深い

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なぜ「母と娘」の間にこういった確執が存在してしまうのでしょうか。女性同士は、毎月生理があり、妊娠する、といった女性の身体の特徴を共有しています。だから母と娘の関係は、母と息子の関係に比べて距離が近い。その分、憎悪も増えるし「この子は私の一部」という執着も生まれるのです。憎悪と執着というのは、ベクトルは反対だけど実際は同じことなのです。

最近、「子供から搾取する親」の問題が指摘されています。 「搾取」とは経済学の用語ですが、心理的な虐待を受けた子ども、当事者の立場から新しく用いられるようになった言葉です。子が母から多くのものを奪われている、と実感したからでしょう。

娘の自由を奪い、きょうだい差別をする母

でも、世の中に搾取しない親はいません。例えば、親の虚栄心から娘をピアニストに育てる、という場合、それは搾取ではないでしょうか。一見すると搾取には見えませんが、これは、「あなたの才能を伸ばすのは、あなたのため」という言葉によって、平凡な女の子として生きる、娘の自由を母が奪う行為なのです。

TBSテレビの連続ドラマ『37.5℃の涙』(毎週木曜9時放送)の主人公の母のように、子供に介護をさせるのはわかりやすい搾取です。他には「家事をさせる」「自分の愚痴の聞き手にさせる」「夫婦間に防衛壁として入らせる」といったことがあります。

夫婦間の防衛壁とは、夫が怒鳴り始めると間に娘を置くとか、夫が夫婦関係を求めてきたら、娘の部屋に逃げ込み断る、などです。「パパやめてよ」と娘が言うと、「じゃぁ、お前が代わりにやるか」といわれた子どもも何人もいます。虐待とはこのように子供からエネルギーを奪ってしまうので、基本的には搾取といえます。

母親の愛情が知らず知らずのうちに娘を追い詰めることがあります(写真:わたなべ りょう / PIXTA)

きょうだい間の差別も実際にある問題です。子供が何人かいると、1人だけ他の子とは違う、なんか可愛くない、という、相性の合わない子供の存在が出てくることがあります。それは、比較をするから起こる現象です。

よくあるのは、ジェンダー(性区別)による差別。男の子だけを特別扱いして、長女や妹に対しては酷い扱いをするというケースです。同性の場合、自分の期待通りに育つ子と、自分の思い通りにならない子がいた場合、後者とは相性が悪いと感じ、そこに差別が生まれます。

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