JFE、海外攻勢に不可欠な国内の"鍛錬"

JFEホールディングスの林田社長に聞く

「海外でどんどん成長の芽をつかんでいかなければならない」と語った林田英治社長。
新日鉄住金に先立つこと10年前の2002年9月。旧川崎製鉄と旧日本鋼管(NKK)が合併し、JFEホールディングスが誕生した。経営統合の効果や合理化のメリットをフルに活用し、「模範的な成功例」と評された時期もある。
だがその後、中国メーカーの台頭や、2012年の旧新日本製鉄と旧住友金属の統合による新日鉄住金の誕生など、鉄鋼業界を取り巻く競争環境は大きく変わった。ここ数年は収益水準で新日鉄住金に水をあけられている。市場からは「成長戦略が見えづらい」という声もある。
こうした中、2015年4月にJFEホールディングスのトップに就任した林田英治社長は最初の一手として他社がベトナムに建設中の高炉への出資を決めた(インタビューは出資の決定前に行った)。その先にどういった成長戦略を描くのか。林田社長に聞いた。

 

──昨年以降、JFEでは、台湾の大手石油化学メーカー・台湾プラスチックグループ傘下で、ベトナムに一貫製鉄所を建設中の会社に出資を検討している。

 東南アジアのインフラ需要はひと頃の勢いがないとはいえ、今後も順調に伸びていく。そうしたところをきっちりと捕捉していけば、勝算はある。自力で新しいものを造るより、動き出そうとしている高炉に出資するほうがチャンスがある。実際の稼働はもう少し先(2015年秋から順次稼働予定)なので、リターンが確保できるかを詰めている。

(注:7月30日、JFEスチールは、5%出資と技術支援・供与によるベトナム一貫製鉄所プロジェクトへの参画を発表した)

──この10年間でタイをはじめ、中国やブラジル、ベトナムなどさまざまな新興国で一貫製鉄所を造る計画を検討しては、断念してきた。

 海外に高炉を備えた一貫製鉄所が必要だという考えは今も変わっていない。ただ中国の過剰生産が2億~3億トンに達する中、しばらくは自力でアジアに高炉を造る選択肢はない。

中国の過剰生産は2020年ぐらいまでは今の状況が続くだろう。ただ、世界的な需給ギャップが5億トンあって、「これはもうどうしようもない」というように言われている。では、需給ギャップが3億トンを切ってきたら何が起きるか。実は2005年から2008年のリーマン・ショック前のピーク時でも、統計上の需給ギャップは2億~3億トンあった。

だから、表面上は5億トンの需給ギャップがあっても、実態としては、2億トン程度かなと私は思っている。そもそも(素材である)鉄鋼業の操業率が100%ということはまず考えられない。

大型投資は10案件ぐらいの検討が必要

――かつて、旧川崎製鉄はAKスチールに、旧日本鋼管はナショナルスチール(当時、現在はUSスチールに吸収合併)と、米国の鉄鋼メーカーに出資したが、最終的にはほぼ撤退に追い込まれた。JFEが大型投資の決断に時間がかかっているのは、こうした過去の失敗からの反省も背景にあるのでは?

私はそう思わない。確かに経営手法に若干まずい部分があったのかもしれないが、結局は日本にある本体の財務体質があまりにも悪くなって、撤退を決めたことが要因だ。だから、やっていることは正しくても、本体がしっかりしてないとやり遂げられないという教訓はあったが、間違いということはない。

大きな投資はひとつやろうと思ったら、10くらい検討しないとできない。経済的な回収を考えるとなかなか踏み切れない。

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