キリンが海外戦略で誤算、ブラジルのビール大手買収で泥沼
キリンホールディングスが、買収したブラジルビール大手スキンカリオールの舵取りができないでいる。8月に2000億円を投じて買収したが、創業家間の権力争いに発展。法廷闘争に巻き込まれている。
アジア、オセアニア市場に力を入れるキリンのブラジル進出には当初から驚きの声があった。が、ビール総消費量で日本の約2倍、市場も年率約10%で伸びているブラジルは海外事業拡大をもくろむキリンにとって見過ごせない市場。その中で、スキンカリオールはシェア15%を握る優良企業との見立てだった。
ところが、買収発表直後から“悪夢”が始まる。
同社株式は、創業家の孫がそれぞれ経営するアレアドリ社(以下ア社、保有比率50・45%)とジャダンジル社(以下ジ社、同49・55%)の2社が保有。今回キリンは、ア社が持つ全株式を取得して子会社化を試みた。
が、これに対してジ社が相談なしに株式を譲渡したのは株主条項違反だとして、サンパウロ州イトゥー市裁判所に買収無効を求める仮請求を提出したのだ。
8月4日に同裁判所がジ社の請求を認める判決を下したことで、キリンは上級審であるサンパウロ州裁判所に上告。10月11日には一転、ジ社の申し立てを却下する判決が下された。ようやく役員の派遣など、経営に携われる格好だが、この先も波乱含みだ。
一段の泥沼化も
まず「ジ社側は今月中にも、最高裁へ異議申し立てをするだろう」と現地関係者は見る。9月には仮処分より重い本訴訟にも踏み切っており、結果次第ではキリンの経営権行使が再び難しくなる可能性もある。