ユーロ圏諸国に対しIMFはあまりに甘い--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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状況の悪化に伴い、IMFが、その物言いをより慎重にするという見方もあった。しかし実際には、2011年4月のIMF暫定会合で幹部職員の一人が、IMFは困難を抱えたスペインについて、ギリシャ、ポルトガル、アイルランドのような周辺国ではなく、ドイツのようなユーロ圏の中核国と見なすことにしたと表明した。彼らは「スペインとドイツの債務は実際上同一と見なすべきだ」と投資家に気づかせたかったのだろう。これはユーロ圏の昔ながらの思い上がりだ。

私は以前IMFチーフエコノミストを務めたので、投資家の信頼を築くことと、やる気のない政策策定者を揺さぶることを両にらみする必要がIMFにあることはよく知っている。だが、危機の最中に慎重であることとナンセンスな言葉を吐くこととはまったく別のことだ。

ユーロ圏の分割や憲法改正も視野に

シカゴ学派のエコノミスト、故ジョージ・スティグラーだったら、欧州におけるIMFの役割は深刻な「規制の虜」を反映していると語っただろう。端的に言って、IMFでは欧米があまりにも大きな権力を握っており、欧米の考えが支配的になりすぎている。欧州の指導者たちがIMFに最も求めているのは、安易な融資と強力な支援発言かもしれない。しかし、欧州が本当に必要としているのは、IMFが従来、政治的な影響力で劣るほかの加盟諸国に与えてきたような忌憚ない評価と厳しい愛情である。

一連の対応のまずさは、ウォール街の一流投資会社によるリサーチに浸透している「われら」と「彼ら」的な意識からも来ている。先進経済諸国の仕事だけを行ってきたアナリストらは、うまくいく物事に金を賭けることを学んできたといえる。なぜなら今回の危機以前、過去20年間、概して物事は非常にうまくいっていたからだ。

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