【産業天気図・自動車】足元は震災影響からの反動増産でにぎわう、だが来春以降は円高痛く「曇り」に後退

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11年10月~12年3月 12年4月~12年9月

自動車業界の景況感は2012年3月までは「晴れ」に回復するが、同4月~9月は「曇り」に後退しそうだ。足元の震災影響からの反動稼働効果が剥げ、同時に円高が打撃となる懸念が強い。

3月までは自動車各社とも東日本大震災からの挽回を急ぎ、「かつてない大増産」(志賀俊之・日本自動車工業会会長)を見込む。最新の「会社四季報」(9月12日発売)ではトヨタ自動車の上期の営業利益をゼロ、通期は5500億円と予想している。生産の回復は想定以上に早まっており、8月に発表された会社予想(通期4500億円)を上回る見通しだ。日産自動車やホンダも、下期は挽回生産による増益が予想される。

最大の懸念は急激な円高だ。各社とも通期の想定レートを1ドル80円で置いており、1円円高でトヨタは340億円、日産200億円、ホンダ150億円の営業利益が減る公算。現状の為替水準が続けば収益へのマイナス影響は避けられない。

もう一つの懸念は世界景気の減退による自動車販売の減。各主要市場とも当初の見通しより伸び率は鈍化しそうだ。ただ北米はリーマンショック後からの回復局面にあることは変わりなく、世界最大市場の中国も5~10%の成長は見込めそうだ。急激な円高などを折り込んでも増産効果が上回り、「下期挽回シナリオ」そのものに変化はない。

だが、12年度前半は挽回生産の効果が剥げる。現在の円高水準が続けば日系メーカーの収益は伸び悩みを余儀なくされそうだ。トヨタは現時点で12年度も高水準の生産を見込んでいるが、現在の円高水準を前提にすれば、生産は11年度後半をピークに減少に向かう公算が大きい。新車のモデルサイクルの中で、特に強い車が見当たらないこともマイナス要因だ。前年同期比では震災影響が消えるため増益は間違いないが、増益幅は限定的なものになる可能性がある。
(並木 厚憲=東洋経済オンライン)

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