ROEだけじゃない、気候変動も大きなテーマ

OECD玉木事務次長に聞く

玉木林太郎(たまき・りんたろう) 経済協力開発機構(OECD)事務次長。1976年東京大学法学部卒、旧大蔵省入省。財務省国際局長、財務官を経て、2011より現職。(撮影:風間仁一郎)
 金融庁と東京証券取引所で策定したコーポレートガバナンス・コードが6月に施行された。社外取締役を導入した上場企業は9割を超え、ROE(株主資本利益率)を経営目標に掲げる企業が増加するなど、日本企業の間で企業統治に関する関心や機運が高まっている。一方、OECD(経済協力開発機構)では、2004年に改定したコーポレートガバナンス原則の2回目の見直し作業を進めており、この9月にもとりまとめられる予定だ。
 世界各国のコーポレートガバナンス事情や議論はどう展開しているのか。このほど来日したOECDの玉木林太郎・事務次長に尋ねた。

――OECDのような国際機関がなぜコーポレートガバナンスの充実を説いているのでしょうか。

OECDはIMF(国際通貨基金)や世界銀行のように、お金を貸す機関ではなく、平和や安全保障、外交分野を除いたすべての公共政策を手がけている。公正取引委員会や消費者政策委員会のようなテーマを議論する場があって、その一つとしてコーポレートガバナンス委員会が存在する。1999年に初めてOECDのコーポレートガバナンス原則(プリンシプル)を策定した。

その狙いは、各国バラバラにコーポレートガバナンス・コードに類したものをつくっていたが、それを担当者していた人たちが一堂に会し、一種の国際的なベンチマークをつくろうということ。担当者たちがこれまでやってきたこと、これからやりたいことを持ち寄り、もっと進んだ形の基準をつくってみようと始めた。ただ、プリンシプルを作ったからといって、OECD加盟国にそれと同じものを導入しなさいといっているわけではない。

幅広く市場参加者の役割を議論

――OECDプリンシプルの特徴は?

日本でよく議論されるような会社の経営陣や取締役会の権能に限られるのではなく、資本市場の権能や株主、投資家の役割、取引所も登場する。会社法や証券取引法、米国の場合にはSEC(証券取引委員会)の規則といった法体系の中での位置づけも議論している。それぞれの国のコンテクストの中で、各国にふさわしいコードをつくっていただきたい。OECDの原則をそのままコピーしてうまくいかなかった国もあるが、今回の日本の場合、金融庁や経済産業省、東京証券取引所が一生懸命取り組み、議論を尽くしてコードができた。非常に大きな達成だ。

さらに、もう一点付け加えると、昨年の成長戦略の中に「OECD原則に基づき」というくだりが挿入されていたが、OECDでも1999年にプリンシプルをつくった後、2004年にエンロン事件を受けてプリンシプルを改定した。いま2度目の改定作業が大詰めを迎えている。その作業と日本のコーポレートガバナンス・コードの策定は並行して進んでいた。

OECDのプリンシプル改定の議論が日本のコード策定プロセスにうまくインプットできたし、日本でいま一生懸命議論していることが、逆にプリンシプル改定の議論に影響を与えている。この2つがエコーし合って、うまいプロセスになったな、と思っている。

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