地方はどうすれば「横並び」から脱出できるか 「プレミアム商品券」では地方は生き返らない

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時事通信などのメディアも詳しく報じている通り、今回も、政府が交付金を配る際、プレミアム商品券というメニューを提示した途端に、1709市区町村と30都道府県からプレミアム商品券を実施するという計画が出されました。

今年4月現在の市町村数は1718ですから、ほぼ100%といっていい自治体で展開されるわけです。プレミアム商品券に類似する、旅行商品の割引事業もまた、東京都を除く46道府県で取り組まれます。

プレミアム商品券の是非の議論はさて置き、国から方針が出された途端、「他の自治体に出し抜かれるな!!」というような話になり、全国で同じことを実施することになったわけです。

どうやって「突出したウリ」コンテンツを作るか

かつては、商業系の販売促進事業は、商店街の会費等を通じて、民間主導で実施されていました。

一部の商店街でしかやっていなかったからこそ、周辺からも通常以上に顧客の流入があり、例えば各店舗が値下げする負担を超えるだけの売上げの伸びがあり、結果として地域に利益がもたらされたわけです。しかし、このような方法も、拡大経済的な薄利多売時代のやり方と言え、縮小社会では消耗戦にしかなりません。

そんな薄利多売の販促手法が、いつの日からか自治体が補助金で支援をするようになり、そして今回は、ついに全国区一律で税金で国策として実行されるようになってしまいました。これは緊急経済対策ではあるかもしれません。しかし、地域活性化の効果は望めなくなりました。

皆がやっていることをただひたすらやっても、それは平均点をとるだけの戦略です。あえてその地域を選択してもらえる理由は、何一つとして出てきません。

多様化している社会において重要なのは、限られた一部の人たちに熱烈に支持される突出したコンテンツを用意することです。

実際に、他地域にはない、地元の持つ「人材」や「環境変化」に適合した絞り込みを行って、「突出したウリ」を作り出す取り組みで成果を収めているケースがあります。こうした成功地域ではいたずらに割引するのではなく、むしろ高付加価値(高価格)の方向へと舵を切っています。ここでは人材や環境変化に適合した「絞り込み」を行っている2つのケースを紹介しましょう。

まずは、地元の持つ優れた人材に適合した絞り込みで成功しているケースからご紹介しましょう。岩手県紫波町(盛岡から南へ電車で約15分)のオガールエリアです。オガールについては、以前のコラム「リアルな地方創生は、補助金に頼らない」でも少しご紹介しましたが、実は同エリアには、民間資金だけで建てられた「オガールアリーナ」というバレーボール専用練習体育館があります(冒頭の写真参照)。

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