日本版スマートグリッドは離島から始まる! “先進地”黒島・屋久島現地ルポ

拡大
縮小


 屋久島電工の小松俊男社長は反論する。「当社と九州電力とを比べてみてください。事業規模は雲泥の差だ。体力が弱い中で、必死で投資資金を捻出している」。事実、10年3月期の同社の営業利益は5億円程度(九州電力は990億円)。これでは設備改修余力も限られる。大手電力会社ならば当然できている送配電網のループ化(複数の電力供給ルートを整備して停電リスクを減らす措置)も発達途上。送電・配電網ともに今後ループ化を積極的に進めていくという段階だ。

ここから話を一般化するのは危険かもしれない。が、大電力会社のような法的供給義務がなく、小規模ゆえに設備改修が後手に回った屋久島の事例は、“スマートグリッド”的社会で住民が被りうる一つの懸念を示唆する。他方、黒島のように再生可能エネルギーの活用が地域活性化や環境意識啓発への起爆剤になる期待もある。正負の両面を考慮しながら、今後の仕組み作りにどう生かしていくか。離島の経験はすべての日本人にとってひとごとではない。

(週刊東洋経済2011年7月30日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT