経常収支の不均衡の拡大、米国の「涙のない赤字」がついに限界に来た~米国債格下げが意味するもの--三國陽夫・三國事務所代表/エコノミスト

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 つまり、アジアの供給力に対して、日本が買い手に回るということだ。円高を生かして輸入を大きく増やすことで、消費拡大、内需拡大を進めて行く。こうした変化により、経常収支が均衡に向かい始める。日本は所得収支の黒字が大きいので、経常赤字にはなかなかならないが、貿易赤字がこれを消していく方向だ。

これを企業の競争力の面から考えると、日本のような先進国の企業は、コストダウンという方法によってではなく、プライシングパワー(価格設定権)を増すことによって、競争力の強化を図るべきだということだ。そうすれば、中国を意識して人件費を切り下げるという必要がなくなる。
 
 日本の輸出企業はまだ、先進的な技術を保持している。円建てで取引を行い、価格設定ができる企業もあるはずだ。厳しい日本の消費者の需要に応えることで、そのようなビジネスをつくっていくべきだ。

液晶テレビからの撤退の動きは当然のことだ。他の国でも作れるようなものを作っていたのでは、利益は出ない。

労働人口が減るから、日本は成長しないという議論が盛んだが、経済成長の条件は人口が増加するか、生産性が上昇するかだが、生産性の上昇という点で重要なのはTFP(total factor productivity、全要素生産性)だ。すなわち技術革新の部分だ。
 
 アップルは300ドルで売れるiPodを中国などの下請けで20~30ドルで作らせているから、儲かる。米国の企業は創造性の部分で付加価値を挙げている。

もともと日本には、江戸時代に見るように、庶民文化から貴族文化まで質の高い文化がある。質の高い食や漫画・アニメなどが海外から高く評価されている。日本の輸出企業が世界を席巻したのも、日本の消費者の厳しい評価を受けたものを輸出したからだ。

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