原発事故の賠償指針で被災地に広がる不安、「線引き」が決める原発賠償の”格差”

原発事故の賠償指針で被災地に広がる不安、「線引き」が決める原発賠償の”格差”

6月末に開かれた福島県弁護士会による、福島第一原子力発電所事故の損害賠償説明会。会場である郡山市の複合施設には400人近くが詰めかけた。訪れた40代の男性は「富岡町で両親が農業を営んでいたが、農機具や不動産など細かな資産目録を作っていたわけでなく、どれだけ損害を立証できるか心配」と不安気に語る。

いまだ原発事故収束の道筋が見えないまま、損害賠償の議論が進んでいる。東京電力が原発30��圏内の住人や事業者に対し仮払いした一方、政府の原子力損害賠償紛争審査会は賠償の対象や金額の算定方法などの基準となる指針を作成。迅速な支払いを進めるため、順次指針を発表しており、8月5日には中間指針が発表される予定だ。しかし、被災地では、その指針をめぐる混乱や不安が広がっている。

精神的損害の基準は自賠責の慰謝料?

たとえば今回、原発事故として初めて認められた、精神的損害。賠償金額は体育館など避難所(1人月額12万円)と、知人宅など避難所以外(同10万円)とでは、2万円差がある。説明会に出席した60代の夫婦は、「体育館にいようと、親戚宅にいようと、精神的な苦痛は一緒。なぜ額が違うのかわからない」と困惑する。浪江町に住んでいた夫婦は原発事故後、東京に避難。現在、夫は派遣の仕事に就いているが、慣れない電車での通勤生活で、体重は10�以上減ってしまった。「着のみ着のままで出てきて、まさかこんなに避難生活が長引くとは思わなかった」と、妻は嘆く。

しかも、半年後は半額になるうえ、1年後以降は未定。「普通に考えれば苦痛は避難生活が長引くほど大きくなるはずなのに」と、浪江町商工会の神長倉豊隆氏は憤る。

損害金額の算定方法にも疑問が残る。審査会では負傷を伴わない類似例として、自動車損害賠償責任保険における慰謝料(日額4200円、月額換算12万6000円)を参考としている。が、事故の種類がまったく異なるだけに、現実を反映できているとは言い難い。

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