起業家育成・学費実質無料の「高専」2年目の今 神山まるごと高専 東京の進学校辞退の入学者も

拡大
縮小

「チームのなかでロボットづくりの経験者は1人しかいません。でも知らないテクノロジーをどんどん開発してくのが楽しいです。それが動いた瞬間が本当にうれしいですね。チーム内のコミュニケーションや資金集めには苦労しましたけど……」と語る名和さん。

ハワイで行われる予選に出場するための資金600万円は、企業や地域の人から協賛金で集めることができた。今、ロボット製作に日夜集中できる準備は整っている。

名和さん
現在製作中のロボットを前にする名和さん。寮生活には満足しているが、「まだまだ自治には至っていないので、みんなでアップデートしていきたい」と語る(撮影/藤川満)

「自分でやりたいことができる」

「中学時代は、将来なにか特にやりたいことがあったわけではありません。たまたま父親に勧められてこの学校のキャンパスツアーに参加して、進学を決意しました」と語るのは静岡県出身の伊藤楽大さん。

入学後、起業家や教員とコミュニケーションを取るうちに、徐々に「やりたいこと」が見えてきたという。

「いろいろチャレンジしている大人と出会えたことで、選択肢がものすごい広がった。今はその選択肢のなかから、農業が『やりたいこと』としてクローズアップされてきました」。

静岡の市街地で育った伊藤さんは、神山の自然に触れたこともひとつのきっかけになった。

同校の理事が運営する農園に足を運んだり、周辺の草刈りの手伝いなどを経て、ますます農業にはまっていった。

神山町特産であるシイタケの農家をはじめ、農業を通じて地域の人と関わりを深めていくことで「自分でやりたいことができる」と自信を持ち始めている。

その一方で悩んだのは、寮生活と偉大すぎる起業家たちの存在。

「寮生活は自分にはあまり合わなくて、少し悩みました。それと『自分も起業家のようにならないといけない』というプレッシャーも感じました」

ふたつの悩みに押しつぶされそうになった伊藤さんを救ってくれたのは、同校のスタッフの存在。

「時間が解消してくれたものありますが、話を聞いてサポートしてくれたスタッフさんのお陰で乗り越えることができました」と振り返る伊藤さん。

目下じゃがいもづくりに興味を傾けているが、将来は自然関係の会社の経営を夢のひとつとして描いている。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT