起業家育成・学費実質無料の「高専」2年目の今 神山まるごと高専 東京の進学校辞退の入学者も

拡大
縮小

これを実現するにあたり、民間企業から一口10億円の出資や寄付を募り、それを運用して得た運用益を返済不要の奨学金に当てる仕組みを構築。

この日本初の取り組みに、ソフトバンク、富士通、ロート製薬など、日本を代表する企業が賛同し、合計11社、総額100億円の金額が集まった。現在、1期生だけでなく2期生以降の学費無償化の目処もたっている。

資金を拠出した企業は「スカラーシップパートナー」として以降も連携していき、学生との共同研究や新事業の創造などに取り組んでいく。

ほかにも物品やサービスを提供する「リソースサポーター」、実際に各社の強みのある領域を授業で提供する「プログラムパートナー」など、合計70社以上の企業が同校の運営を支援している。

それほど日本の企業が同校に期待を寄せている表れと言えよう。

「OFFICE」の窓ガラス
「OFFICE」の窓ガラスにはパートナー企業の会社名がずらりと並ぶ(写真撮影/藤川満)

進学校よりも魅力を感じて門を叩いた

現在の在校生は東京、北海道、徳島と全国各地から集まっている。なかにはロンドンの日本人学校出身の学生もいて、さまざまな思いを持って神山の地で全寮生活を送っている。

開校当時は特にルールもなく、戸惑いがちだった学生たちも、会議を開くなどして、自分たちの主体的な考えに基づいた自治へ歩みつつある。

「1人になる時間はあまりないですが、毎日が修学旅行みたいで楽しい」と寮生活を語るのは東京都出身の市川和さん。

一時は同室者との価値観の違いに悩んだというが、「今は吹っ切れた」と心境の変化もあった。

高校受験時の市川さんは、ICUや青山学院にも合格していたが、父親の紹介で同校の存在を知り、あえて神山まるごと高専を選んだ。

「ICUや青山学院に進学すれば、安定した道を歩んだかもしれませんが、自分の心に正直になり、より楽しそうなこちらに決めました」

当初は具体的な目的があったわけではないが、現在はグラフィックデザインに興味を持ち、先述の「Wednesday Night」のチラシやEスポーツに関するフリーペーパーの制作に力を入れている。

「この学校に入って初めてAdobeのソフトを授業で触れてみた時『これまでの勉強よりおもしろいことあるじゃん!』って思いました」と目を輝かせる。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT