激減した「サブウェイ」じわり復活している事情 意外と知られていない「パンへのこだわり」

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サブウェイ
2番人気のBLT(フットロング・990円)。2倍サイズのフットロングはアメリカではよく注文されるという。日本では認知度が低く、周囲の目が気になるためかあまり出ない。セルフオーダーシステムの普及により人気が高まっていくかもしれない(撮影:今井康一)

なお直近の値上げの情報を見てみると、2022年11月、2023年5月価格改定を行っており、一例としてえびアボカドサンドイッチが550円から590円まで値上がりしてきている。

こうした上昇気流に乗り、サブウェイが現在進めているのが、「セルフオーダーシステム」の導入だ。これはいわゆるタッチパネルで注文、支払いまでできるシステム。コロナ禍を経て普及が広がっているが、同チェーンでの導入は、コロナとは別の理由から始まっている。

セルフオーダーのメリット・デメリット

「お客様の好みを聞きながら仕上げる従来の方式はサブウェイの特徴ではあるが、一方でハードルが高いと感じる方もいる。2022年からテスト的に導入を始め、現在までに19店舗まで増えてきた」(土井氏)

サブウェイ
サブウェイが導入を進める「セルフオーダーシステム」。パンの種類やトッピングの選択もでき、タッチパネル式に慣れた客にとっては注文しやすい。人材コストを低減できるメリットも大きく、店舗網拡大において強いツールとなりそうだ(撮影:今井康一)

筆者自身も、サブウェイでの注文時に好みを伝えることや、サンドイッチが作成されていく様子を見守りながらショーケースのそばをじりじりと進む過程に居心地の悪さを感じていた一人である。

例えば行きつけの魚屋や八百屋でなら、ものの売り買い以外のコミュニケーションも発生するかもしれないが、チェーン店、しかもあまり足を運ばない店では難しい。

自分であれば、迷わずタッチパネルでの注文を選ぶだろう。

店、つまりフランチャイズオーナーにとってもメリット・デメリット双方があるようだ。

メリットはなんと言っても、人手不足対策、人材コストの低減だ。

一方で、機械のため融通が利きにくいというデメリットがある。例えば「サンドイッチをカットしてほしい」と思っても、現在のところタッチパネルでは注文できない。もっとも、こうした細かい点については今後現場からの声を集め、改善していくという。英語以外の中国語、韓国語にも客の要望に合わせて対応する予定だ。

また、「サブウェイの良さ」がなくなってしまうと感じているオーナーもいる。

ただ、何がブランドの良さなのかは、客とのコミュニケーションの中で定まっていくものだ。その過程で変化させていくもの、堅持するものを見極めることが、長く続くブランドには求められる。

サブウェイでは2024年内に約20店舗の出店を計画し、今後5年間で300店舗まで広げていく考えだ。人手不足の今、人材面のメリットが大きいセルフオーダーシステムはそのための強力な武器となる。

セルフオーダーシステムの普及により懸念されるものがあるとすれば、客との直接の接点が減ることにより、客との間に1枚、壁のようなものができてしまうことだ。サービス品質の低下を招くリスクもある。

例えばコロナ禍に増えた宅配では、店舗が客と顔を合わせないため、商品のミスが起こりやすくなり、客のクレームが店に届きにくいなどの弊害が指摘された。

デジタル化の一方で、サービスを補える何かを見つけられるかが、今後長期的に伸び続けられるかのカギになるのではないだろうか。

圓岡 志麻 フリーライター

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まるおか しま / Shima Maruoka

1996年東京都立大学人文学部史学科を卒業。トラック・物流業界誌出版社での記者5年を経てフリーに。得意分野は健康・美容、人物、企業取材など。最近では食関連の仕事が増える一方、世の多くの女性と共通の課題に立ち向かっては挫折する日々。contact:linkedin Shima Maruoka

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