超人気ラーメン店で「社内独立」師弟の熱いドラマ 「店づくりから味、屋号まで好きに決めていい」

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独立というと修業を終えて退職し、開業資金を貯めて、物件を見つけて一から店づくりをするというのが当たり前だった。開業資金は安くても400万~500万円。1000万円かかるというパターンもザラである。

昨今、ラーメン店の廃業が盛んに取り沙汰されている。その際によく指摘されるのが「参入障壁の低さ」だが、それでも初期費用はかさむのである。当然誰でもできるということではない。

社員として雇用しつつ、頑張れば給料が増える仕組みに

そんななか、「百麺」が社内独立の制度を始めたのはなぜか。

「もともとの入り口は、頑張っている社員の給料を増やすにはどうしたらいいかということでした。

今ある『百麺』のお店の売り上げを一気に倍増させるというのは簡単ではありません。独立志望の従業員に社内独立してもらうことで、会社と従業員それぞれにウィンウィンの形が作れるのではないかと考えたのです」(宮田さん)

調理中の鈴木さんの様子(筆者撮影)

独立する店主は店づくりや味づくりなどは行うが、経理などの事務系の仕事は本社に任せることができる。店主は今までどおり「店長」のような働き方で自分の店を持つことができるのだ。

また、「百麺」では、売上から月額の固定費(出店にかかった費用はここで消化していく)を引き、残りの売上はすべて店主に戻す形にしている。社内独立なので、雇用は「百麺」の店長時代と変わらないのもポイントだ。

「売上に合わせてロイヤリティで納めてもらうことも考えましたが、できるだけお店が売れれば売れるほど給料が上がる形にしたくて、今の制度を採用することにしています」(宮田さん)

グループに属しながら独立することで、食材などはグループ全体で発注することができ、スケールメリットを出すことができる。保険なども当然割安になる。

「このお店も立ち上げの初期費用で600万円から700万円ぐらいはかかっています。これを個人で負担するのはやはり大きなリスクだと思います。うちの実家も父が事業で失敗したこともあり、リスクが怖かったというのが正直なところです。

妻も、もともと独立に反対だったので、この形での独立が決まり、喜んでいました。ちょうど子供が産まれた時でしたし、不安だったんだと思います」(鈴木さん)

自分の店を持てたうえで、リスクを軽減することができる、ウィン・ウィンの仕組みだ(筆者撮影)
次ページ1年にわたる伴走、安定するまで独立を待った
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