「金利のある世界」が到来したら起こる生活の変化 日銀正常化によって、日本はどう変わっていくのか

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中央銀行も企業であり、収入と支出があるわけだが、たとえば日本銀行の場合は、保有している資産の債券などから得られる利息が収入となり、支出となるのは一般の銀行が資金を預ける「当座預金」の利息になる。この両者の差が「利ザヤ」であり、通常は当座預金で支払う利息よりも、保有する債券から得られる利息収入のほうが高くなる。実際に、日銀は2022年度末で576兆円の長期国債を保有し、549兆円の当座預金を抱えている。

問題は、金利を急激かつ大幅に引き上げる必要に迫られたときには、当座預金で支払う利息が一気に増えてしまうことだ。国債などの利息収入を上回れば「逆ザヤ」になってしまう。逆ザヤが続けば、中央銀行が抱える資本金や債券などの資産を上回る負債を抱えて「債務超過」に陥る。

詳細は省くが、実際にFRBは急激な金利引き上げで、2023年10月の段階で500億ドルを超える債務超過に陥っていると、定期的に公表する財務データ「準備預金増減要因」で明かしている。2023年の決算では、1143億ドル(約16兆円)と過去最大の赤字になったとも発表した。

中央銀行にとって、逆ザヤと債務超過は大きな問題であり、紙幣を発行している銀行として、お金の価値を減らす=通貨安を招くため、できるだけ避けたい事態と言っていい。FRBが、2024年内に3回の利下げの方針を打ち出した背景には、逆ザヤと債務超過の懸念があるからとも言われている。

「0.28%」の金利で日銀は「逆ザヤ」?

では、日銀が今後金利を引き上げていく場合、どの程度引き上げれば、逆ザヤになるのだろうか。野村総合研究所のシミュレーションによると、日銀が「逆ザヤ」「債務超過」に陥る金利水準は次のようになっている(NRI コラム木内登英のGlobal Economy&Policy Insight「FRBが利上げで過去最大の赤字:日銀は政策金利+0.6%で赤字、+2.8%で債務超過に」、2024年1月18日配信より)。

●日銀が逆ザヤとなる政策金利……0.28%
●日銀が経常赤字となる政策金利……0.58%
●日銀が債務超過となる政策金利……2.75%

ちなみに、東京財団政策研究所のシミュレーションでも、2023年3月末の水準で当座預金の利息(支出)が「0.25%」に上昇すると「1兆3400億円」、国債の利息(収入)が「1兆3300億円」となり、支出が収入を上回る逆ザヤになるとしている。

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