コニカミノルタ、富士フと提携協議でも残る火種 ついに事務機改革に着手、過去最大の人員削減

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今回の人員削減は、業界の流れに照らせば判断が遅かったといえる。

事務機ビジネスには紙での出力機会が減る「ペーパーレス化」の逆風が吹く。オフィスなどに機器を設置し、保守料金、トナーなど消耗品の料金、印刷量に応じた機器使用料などを受け取る盤石なビジネスモデルは不変だが、印刷量は今後前年比5%ペースで減り続けるとの試算もあり、大きな成長は見込めない。

本格的にペーパーレス化が叫ばれるようになったのが2010年代後半頃だ。事務機業界では大規模な人員削減が相次いだ。事務機は伝統的に日系メーカーの世界シェアが高い。中でも参入障壁の高いA3複合機は、キヤノン、リコー、富士フイルムBI、コニカミノルタの4社が高シェアを誇る。

逆風下で事業転換へ舵

事務機の売上比率が高いリコーは2017年度、事務機の営業人員など正社員7700人を削減。事務機の拡大路線を改め、収益性の高いITサービスで成長を目指す方向に舵を切った。

富士ゼロックス(現:富士フイルムBI)も海外を中心に2018年から1万人を削減、工場の閉鎖も断行した。キヤノンはリストラをしない経営方針を掲げているが、有価証券報告書によれば2017年から2018年にかけて、オフィス領域の従業員数(パートタイマー、期間社員含む)を8000人以上減らしている。

各社とも中長期的には事務機の市場拡大が見込めない中で、事業ポートフォリオを見直し、収益性を維持するために人員削減へと踏み込んだ構造改革を断行した。

一方、同時期のコニカミノルタは、製造の自動化で効率化を図る、社員教育を通じて事務機事業から他部門への異動を奨励する、他社への転職を促す「特別転進支援」を行うなどの策を講じたものの、他社ほどの痛みを伴う人員削減には踏み切らなかった。

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