TVマン見た「絶滅危惧種と暮す民族」驚く日常(後) 2時間のトレッキングで見つけた「景色」「真実」

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水に濡れた茶色い岩肌はツルツルとし、時折、滑りコケそうになる。山肌の上を見ると、そこにはゴツゴツとした岩がそびえていた。

それを見て、この道に来る途中のルートを思い出した。

良い景色を見るために、山肌を登ったり降りたりしたのだが、そのとき、上の方に転がる石が尖っていて小さかったことを不思議に思った。

おそらく、崩れ落ちた崖の岩が、川の水の影響で丸くならずに残っているのだろう。

「カナさん、少し山を登ってみようよ。あっちのほうが歩きやすいと思う」

決死のジャンプで増水する川を越える

山を登り始めた。やはり、川のそばよりも少し岩が尖っており、時折砂利にもなっている。下の道よりも歩きやすい。

山の上のほうに砂利が見える(写真:筆者撮影)

しかし、さらなる問題が発生した。小川の水量が増し、濁流となっていたのだ。川に沿って山肌を登ると、一箇所だけ川幅が狭い場所を見つけた。

中央には平らな岩がある。その岩に一度着地し、もう一度飛べば、川を越えられるかもしれない。岩を注意深く観察すると、表面は濡れているが少しザラついており、段差もあることがわかった。

何とか行けそうだ。俺は勇気を出して、三段跳びのように右足で岩に着地し、そのまま反対側に飛び越えた。両足は川の水で少し濡れたが、何とか渡ることに成功した。しかし、女性の足には少し厳しいかもしれない。

「ごっつさん、滑りました?」

「少し滑るかも。一回その岩に飛び乗って、体勢を変えてからもう一度ジャンプしたほうがいいかも」

「えー、怖い」

足元が滑って、頭を打ったら大惨事になるかもしれない。脚力が追いつかず、岩に辿りつかなかったら、落下し、川にのみ込まれる可能性もある。失敗は命に直結する。

俺は頭を切り替えた。自分の恐怖が伝播し、彼女の動きに悪い影響を与えてしまってはいけない。表情をゆるませ、余裕を見せた。晴れやかな声ではっぱをかける。

「行ける行ける。真ん中が平らだから大丈夫だよ。飛び移っちゃえば、あとは余裕だよ」

カナさんは少しためらってから片足でジャンプをし、岩に飛び移った。体を曲げ、手で岩を触りながらバランスよく体勢を整える。なんとか一つ目の難関は突破できた。

次はこちらに飛び移ればいい。彼女は蹴り上げる足場を探し、こちらに向かってもう一度ジャンプした。俺は少し高いところから、彼女の手を握り、引っ張り上げた。

「おー、さすが山ガールだね。脚力がすごい」

「あの岩、結構ツルツルしてて、着地したとき、少し滑って怖かったです」

「急ごう。これ以上、雨が強くなるとどうなるかわからない」

次ページ二人に襲いかかる豪雨と強風
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