通勤型電車はなぜ、「似たもの同士」が増えた? 山手線となんとなく似ているあの電車
工業製品には、「JIS(日本工業規格)」をはじめとする、さまざまな規格が定められている。部品を標準化することは設計・製造コストの低減につながり、互換性の面でも有利となる。規格外の製品は「特注品」となり、とたんに製造費が跳ね上がる。
当然ながら鉄道も、さまざまな面で規格に従っている。ただ、いちばん肝心な車両そのものは、ロットが少数であるなどの理由で、かつては、すべて特注の完全オーダーメードであった。今でも、その傾向は根強く残っている。
「個性重視」からコスト削減へ
ところが20世紀末になると、少子高齢化、将来の人口減少が明らかになり、鉄道も右肩上がりの利用客増が見込めなくなった。一方で老朽化した電車は取り換えなければならない。そこで、1両につき1億数千万円~2億円ほどもする電車の製造コストを抑えることが、喫緊の課題となったのである。
こうした社会情勢からクローズアップされてきたのが、電車の規格化、標準化である。「CIを重視し、個性を発揮してサービスを競いたいのはやまやまだけど、通勤型電車は他社と同じものでも構わないのではないか」という考えに鉄道会社が傾くのも、自然な流れであった。
最新の情報としては、2016年度から東京メトロ日比谷線と東武スカイツリーラインとの相互直通運転用として投入される新型電車(東京メトロ13000系、東武70000系)が、主要機器や主要車内設備について仕様を完全に統一するといったものもある。
そのような流れのきっかけになったのが、1998年のJR東日本E231系電車のデビューだ。4月29日付「山手線に新型車両が導入される本当の理由」で紹介した同社の設備投資についての長期計画に基づき、主力・標準車両として大量生産が予定されていた電車だ。
この電車は現に、2014年度末の段階で2628両が在籍している。ひとつの系列だけで、同じ時点の東京メトロの全保有車両数(2702両)に匹敵する。膨大な数である。これだけ製造されると、JR東日本以外の各社にとっては、E231系に準拠した設計を新製車両に採用するだけでスケールメリットを享受できる。コスト削減が可能となるのだ。
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