キヤノン、御手洗会長「余裕の再任」も消えぬ難題 賛成率は90%に急回復、後継者選びの行方は

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では、キヤノンは今後どのように“ポスト御手洗”を選んでいくのだろうか。

キヤノンの御手洗富士夫会長兼社長
昨年10月の「キヤノンエキスポ」では約1時間の講演をこなした御手洗氏。たしかに健康面の心配はなさそうだ(撮影:尾形文繁)

キヤノンは会社法に定められた指名委員会等設置会社ではないが、任意の指名・報酬委員会(以下、委員会)を設けている。委員会は、代表取締役CFO、独立社外取締役4人、独立社外監査役1人の計6人で構成する。

CEOの後継者選定のプロセスについて、委員会の紹介とともにキヤノンはホームページ上で説明している。以下はその抜粋だ。

「取締役・監査役の候補者の指名および執行役員の選任(最高経営責任者の後継者の選定を含む)に際しては、所定の要件を満たすと認められる者の中から代表取締役CEOが候補を推薦し、その推薦の公正・妥当性を当該委員会にて確認の上、取締役会に議案として提出、審議しています。」

「特に最高経営責任者の後継者候補につきましては、経営幹部の研修制度、執行役員選抜後の人事異動や全社的プロジェクトへの関わりなどを通じた経営経験の蓄積を図るしくみを通じ、CEOが自らの責務のもとで候補の選定・育成を行っており、その過程を『指名・報酬委員会』が確認します。」

御手洗氏が責任を持って後継者を選定・育成し、そのプロセスと推薦の妥当性について社外取を中心としたメンバーがお墨付きを与える仕組みということだ。

社外取への考え方にも変化?

かつては社外取の選任に消極的な姿勢をみせていたキヤノン。社外取を初めて2人登用したのは2014年と、日本の大企業の中でもとくに遅かった。しかしこのほど、社外取の役割が問われる“有事”を前に増員を決めた。

「人事の透明性を追求してきた」。2023年10月の東洋経済の取材でそう語った御手洗氏の、社外取に対する考え方の変化を反映しているといえそうだ。

次の経営トップの選定を着実に進められるのか。キヤノン最大の課題を前に、取締役会の新たなメンバーは重い役割を担うこととなる。

吉野 月華 東洋経済 記者

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よしの・つきか / Tsukika Yoshino

精密業界を担当。大学では地理学を専攻し、微地形について研究。大学院ではミャンマーに留学し、土地収用について研究。広島出身のさそり座。夕陽と星空が好き。

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